Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
産婦人科:周産期・その他

(S426)

子宮内絨毛性病変における3Dパワードプラ法を用いた子宮動脈血流の左右優位性評価

Evaluation of right-left superiority for uterine artery blood supply on intrauterine chorionic lesions using 3D power Doppler sonography

妹尾 大作, 東條 伸平, 弓削 乃利人, 高木 香津子, 大下 裕子, 本田 直利, 横山 幹文

Daisaku SENOH, Shinpei TOHJOH, Norihito YUGE, Kazuko TAKAGI, Yuko OHSHITA, Naotoshi HONDA, Motofumi YOKOYAMA

松山赤十字病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Matsuyama Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
頚管妊娠や胎盤ポリープなどの血流豊富な子宮内絨毛性病変は,安易な子宮内容除去術や子宮鏡下手術で大量出血を来すことがあるため,子宮動脈塞栓術(UAE)の併用あるいは単独療法を行うことが少なくない.通常,UAEの際の骨盤内血管造影(PAG)における病変への血流分布より,子宮動脈血流の左右優位性を評価し,両側塞栓か片側塞栓かの判断基準とする.今回,UAE施行前の子宮内絨毛性病変おいて,3Dパワードプラ法による子宮動脈血流の左右優位性が評価可能か否かについて検討した.
【方法】
UAEが予定された血流豊富な子宮内絨毛性病変の3症例(頚管妊娠1例,胎盤ポリープ1例,絨毛遺残1例)において,UAE施行前に3Dパワードプラ法を用いて両側子宮動脈の血流像を抽出的に構築し,血流の左右優位性を評価した.
[症例1]進行流産または頚管妊娠の疑いにて当院紹介.血中hCG値は21464mIU/mlで,経膣超音波断層法所見上,著明な子宮留血腫を呈しており,頚管内に変形した胎嚢様のecho free spaceが認められた.カラーおよびパルスドプラ法で左右子宮動脈を確認した後,3Dパワードプラ法を用いて同動脈血流を描出したところ,左に比べて径の太い右子宮動脈血流が明瞭に描出され,その血流は胎嚢様echo free spaceに連続し背側で著明に分布していた.以上より右子宮動脈血流優位の頚管妊娠と診断し,十分なインフォームドコンセントのもと,右側UAEならびにActinomycin D動注を施行した.しかしながら,血中hCG値の低下が緩慢で,超音波ドプラ法を再検したところ,右子宮動脈からの病変への血流は認められなくなったものの,左子宮動脈から病変へ連続する血流が描出されたため,左側 UAEを追加した後,子宮鏡下病変摘出術(TCR)を行った.術中出血は殆ど認められなかった.
[症例2]人工妊娠中絶術後に持続する性器出血のため当科紹介.血中hCG値1610mIU/mlで,経膣カラーおよびパルスドプラ法にて子宮内に著明な血流を有する腫瘤を認め,胎盤ポリープと診断.保存的治療を希望したため,外来MTX療法3コース施行し,血中hCG値は7mIU/mlと低下したが,腫瘤内血流は改善しなかった.3Dパワードプラ法所見上,左子宮動脈血流優位と評価され,左UAEを予定したところ,PAGにて左子宮動脈のみからの血流支配であることが判明した.しかしながら,同時に血流腫瘍内に著明な動静脈シャント血流が描出され,UAE不能と判断されたため,腹腔鏡下に左子宮動脈のみ結紮した後,TCRにて胎盤ポリープ切除を施行した.術中出血は認められなかった.
[症例3]稽留流産後,絨毛遺残の疑いで当科紹介.血中hCG値25996mIU/mlで,経膣超音波法所見上,子宮内の左卵管角あたりに著明な血流を有する腫瘤を認め,子宮鏡にて左卵管角から左側壁を被うような癒着性病変が観察され,絨毛遺残と診断した.3Dパワードプラ法では両側子宮動脈血流がほぼ同様に描出され,血流の左右優位性はないものと考えられた.PAGでも同様の所見が確認されたため,両側UAE施行後,TCRによる病変摘出を行った.術中出血は殆ど認められなかった.
【結論】
子宮内絨毛性病変おいて,3Dパワードプラ法による子宮動脈血流の左右優位性は評価可能であることが示唆された.