Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
産婦人科:周産期・その他

(S425)

胎児異常検出率向上が新生児搬送に与える影響について

Fetus abnormality rate of detection improvement and Newborn baby transportation

芳野 奈美, 大川 朋子, 吉田 英美, 内田 純子, 田坂 知子, 磯部 美苗, 竹村 秀雄

Nami YOSHINO, Tomoko OKAWA, Emi YOSHIDA, Jyunko UCHIDA, Tomoko TASAKA, Minae ISOBE, Hideo TAKEMURA

小阪産病院医療技術部超音波室

Department of Ultrasound, KOSAKA WOMENS HOSPITAL

キーワード :

当院は東大阪市にある61床の産科・婦人科の専門病院であり,東大阪市の年間分娩数のほぼ40%にあたる約2000件の分娩を取り扱っている.主としてローリスク分娩を取り扱い,ハイリスク例は母体搬送・新生児搬送で高次医療施設に依頼している.
NICUや新生児外科を持たない産科施設では胎児異常の発見が重要と考え,超音波室における胎児スクリーニングの充実には努力して来た.現在超音波室には日本超音波医学会認定の検査士が4名おり,当院受診の妊産婦すべてを対象にした4回のスクリーニング検査と,医師の指示による産科・婦人科の精密検査を行っている.
2001年1月から,複数の検査者が統一した基準によって検査が行えるように出生前にチェックすべき項目をリストアップした40項目のチェックリストの使用と胎児心臓のスクリーニングを開始し,それまで低率であった先天性心疾患の検出率向上にも力を入れてきた.
2001年からの7年間に当院でスクリーニングを施行した14461例を対象に,胎児形態異常を8項目に分類し検出率についての検討を行った結果,中枢神経系では形態異常数25例中23例の検出で検出率は92%,顔面・頸部の異常検出率は39例中22例59%,心臓・大血管系では179例中61例の検出で34%,胸部4例中4例100%,消化器系18例中10例55.6%,泌尿・生殖器81例中77例95%,四肢・骨格系48例中18例37.5%,その他33例中21例63%という結果であった.これら8項目の検出率をまとめると,14461例中の胎児形態異常総数427例(有病率2.95%)中,出生前に検出できたのは237例,総検出率は55.5%であった.
これらの結果をチェックリストと胎児心臓スクリーニングを行う以前の8年分の検出率と比較してみたところ,全体的に検出率が良くなっており特に心臓・大血管系の検出率は2.5倍に上昇した.
精度の高いスクリーニング検査を行えるようになり,生命予後にかかわる疾患を早期に発見し安全な時期に母体搬送を行うことが可能になった.2001年からの7年間(以下B群)とそれ以前の5年間(以下A群)に当院で行った新生児緊急搬送について比較検討を行った.A群では,新生児搬送数91例のうち低出生体重児・呼吸障害や感染など先天性疾患以外と考えられるものが原因で搬送を行ったのが59例(64.8%),形態異常や先天性疾患が原因のものが32例(35.1%)であったのに対し,B群では搬送数135例中前者が111例(82.2%),後者が24例(17.8%)であった.重症の先天性心疾患のために新生児緊急搬送を必要とする児の割合は4分の1に低下させることが出来た.搬送後に新生児死亡となった例はA群で91例中8例(8.8%)であったがB群では135例中3例(2.2%)であり,これも4分の1に減少させることが出来た.
胎児超音波検査を行うにあたり専任技師によるスクリーニング体制とチェックリストは胎児形態異常を検出するのに有用であると思われる.形態異常や先天性疾患による新生児緊急搬送率を4分の1に低下できたことで児の予後改善に役立ったと考えられる.