Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
産婦人科:周産期・その他

(S425)

妊娠10-13週の4D双胎児画像を見た後の妊婦と夫の思い

The feelings of parents after 4D observation of their twin at 10-13 weeks of gestation

佐々木 睦子1, 2, 柳原 敏宏1, 内藤 直子2, 秦 利之1

Mutsuko SASAKI1, 2, Tosihiro YANAGIHARA1, Naoko NAITOH2, Tosiyuki HATA1

1香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学, 2香川大学医学部母性看護学

1School of Medicine,Department of Perinatology and Gynecology, Kagawa University, 2School of Medicine,Maternal Health Nursing, Kagawa University

キーワード :

【背景・目的】
従来妊婦が胎児を自覚するのは妊娠16〜20週以降であり,妊娠中に我が子を具体的にイメージすることはなかなか困難であった.近年の4次元超音波(4D)の発達によって,妊娠初期からリアルタイムにしかも立体的に胎児の描写が可能となり,胎児の全身像をイメージできるようになった.今日の妊婦健診において,胎児の健康状態を評価する上で,超音波検査は欠かせないものとなってきた.双胎妊娠は単胎妊娠に比べハイリスクであり,早産や羊水過多,双胎間輸血症候群などが起こりやすく,分娩時の危険性も高い.そのため双胎妊婦の妊娠や分娩への不安はより大きくなる.さらに,双子を出産した母親の育児不安は,単胎児をもつ母親の育児不安に比べて高い傾向にあることから,乳幼児期の虐待へつながるリスクが推測される.双胎妊婦が安心して妊娠・出産期を過ごすことは大変重要であると思われる.本研究の目的は,4Dによる妊娠初期の双胎児画像を見た後の自由記載内容から,夫婦の双胎児への思いについて検討することである.
【方法】
2005年5月〜2007年5月に当院の産婦人科外来で妊婦健診をうけている妊娠10〜13週の双胎妊婦15名を対象とした.調査時に母体合併症や産科異常のあるものは除いた.本研究は本学倫理委員会の承認を得て行った.4DはVoluson730 Expertにより,経腹的に30分間連続的にビデオテープに記録した.記録したビデオテープを持ち帰り,夫や家族と見た後の妊婦の感想と妊婦の表現による夫の言動を自由記載したものを郵送法で回収した.収集データは質的帰納的に内容分析した.倫理的配慮は,研究目的と方法を文書と口頭で説明し同意書を得た.また,データ管理と分析には最大限の注意を払い個人が特定されないよう十分配慮した.
【結果】
一緒にビデオを見たのは夫(14名,93.3%)が最も多く,また,妊婦が最も関心が高かったのは胎児の身体全体の動き(11名,73.3%)であった.4Dによる双胎児画像を見た後の妊婦の思いの内容分析により,29コードと7サブカテゴリから2カテゴリ「母性意識の発達」「双胎児への愛着形成」が抽出された.妊婦の表現による夫の思いの内容分析により,46コードと6サブカテゴリから2カテゴリ「双胎児への愛着形成」「父親役割の芽生え」が抽出された.さらに,妊婦は4D画像を見た後に肯定的な気持ちへ変化していた.4D画像を見た後の夫婦で双胎児へ否定的感情をもつものは一名もいなかった.
【考察】
妊婦は4Dによる双胎児画像を夫や家族と一緒に見て喜び,肯定的な気持ちへ変化していることから,母性意識発達へよい影響を及ぼす可能性がある.また,双胎児を実感し,成長を願うことは,児への愛着形成を深めていると考えられた.夫は動いている双胎児への関心が増していることから,児への愛着が促されていると考えられた.また,妻が双胎妊娠であることを再確認することは,夫の父親としての役割意識の芽生えに影響していると推測された.妊娠初期に4D双胎児画像を夫婦で共有することは,児の存在を身近に感じて,夫婦の双胎児に対する肯定的な気持ちを育むことができる可能性がある.さらには,安心して妊娠・分娩期を過ごすことに繋がると考察する.
【結論】
4Dによる妊娠初期の双胎児画像を夫婦で見ることは,妊婦の双胎児への愛着形成や母性意識の発達によい影響を及ぼし,また,夫の双胎児への愛着を促す可能性が示唆された.