Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
産婦人科:産科

(S423)

双胎間輸血症候群を発症した二絨毛膜二羊膜性双胎の一例

a case of twin-twin transfusion syndrome in dichorionic-diamniotic twin pregnancy .

住江 正大1, 村田 晋1, 中田 雅彦1, 杉野 法広1, 松浦 真砂美2

Masahiro SUMIE1, Susumu MURATA1, Masahiko NAKATA1, Norihiro SUGINO1, Masami MATSUURA2

1山口大学医学部附属病院周産母子センタ-, 2山口大学医学部附属病院看護部

1Perinatal Care Center,Yamaguchi University Hospital, 2Nursing department,Yamaguchi University Hospital

キーワード :

【はじめに】
双胎間輸血症候群(以下TTTS)は一般的に一絨毛膜性双胎の血管吻合が原因でおこるとされている.二絨毛膜性双胎においては,一般に胎盤の癒合がみられることはあるものの,血管吻合は認められない.今回我々は,二絨毛膜性双胎に発生したTTTS症例を経験したので報告する.
【母体経過】
近医個人病院にて二絨毛膜二羊膜性双胎の診断を受け,予防的頸管縫縮術を行われ管理されていたが,切迫早産のため妊娠23週時に近医総合病院へ母体搬送となった.塩酸リトドリンと硫酸マグネシウムの持続点滴を受けていたが,点滴刺入部より上方の強い上肢痛が出現し,両薬剤の点滴を中止せざるを得なくなったため,妊娠23週3日に当院へ母体搬送となった.当院での超音波検査では一児の著明な羊水過多(羊水深度 14.4cm)および他児の羊水過少(羊水深度 0cm)がみられ,明らかにTTTSの所見であった.血流異常は受血児・供血児ともに見られず,stage IIと判断した.内診にて子宮頸管は開大し,胎胞形成が見られたため,FLPの適応外と判断し,緊急避難的に羊水除去を施行した.その後子宮収縮は軽減がみられた.その後も進行性の羊水過多に対して計13回,28500mlの羊水除去を行い,妊娠延長を図った.妊娠31週5日の超音波検査にて受血児の静脈管に拡張期逆流が出現したため,緊急帝王切開にて分娩となった.胎盤は母体面からの観察では一部癒合はみられたものの二つの胎盤からなっていた.胎児面からみると卵膜は癒合していた.二つの胎盤の中央を縦断するように卵膜の境界がみられ,血管の走行を詳細に観察すると二つの胎盤を中央で二分するように両児の胎盤領域が存在し,数本の吻合血管が認められた.色素注入試験にて数本の吻合血管が認められた.病理学的検索でも二絨毛膜性胎盤と診断された.新生児の血液を用いたSTR(Short Tandem Repeat)法による卵性診断では一卵性双胎と診断された.
【新生児経過】
受血児1332g,供血児998g.両者ともに典型的なTTTSの受血児および供血児の経過をたどった.
【考察】
二絨毛膜性双胎に発生したTTTSは過去に報告例がなく,胎盤の発生学的な側面から考えても非常に興味深い症例と思われた.