Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
産婦人科:産科

(S422)

胎児とともに子宮内に嚢胞像を認めた1症例

A case of intrauterine cystic mass associated with fetus.

嘉治 真彦1, 2, 谷垣 伸治1, 真山 麗子1, 松澤 由記子1, 上原 彩子1, 橋本 玲子1, 山本 阿紀子1, 小澤 伸晃3, 岩下 光利1

Masahiko KAJI1, 2, Shinji TANIGAKI1, Reiko MAYAMA1, Yukiko MATSUZAWA1, Ayako UEHARA1, Reiko HASHIMOTO1, Akiko YAMAMOTO1, Nobuaki OZAWA3, Mitutoshi IWASHITA1

1杏林大学医学部産科婦人科学教室, 2佐々総合病院産婦人科, 3成育医療センター周産期診療部

1Faculty of Medicine Department of Obstetrics and Gynecology, Kyorin University, 2Department of Obstetrics and Gynecology, Sassa General Hospital, 3Department of Maternal and Perinatal Services, National Center for Child Health and Development

キーワード :

【はじめに】
今回我々は,妊娠中期の超音波断層法にて子宮内腔に胎児・胎盤以外に多数の小嚢胞からなる腫瘤を認めた1症例を経験した.胎児共存奇胎を疑うも,慎重な対応により生児を得たので報告する.
【症例】
31歳,0経妊0経産.既往歴・家族歴に特記すべきものなし.現病歴:クエン酸クロミフェンによる排卵誘発・人工授精を施行し妊娠成立.妊娠7週,20×8mmの絨毛膜下血腫様の超音波断層法像を確認.妊娠15週,胎児発育は良好であったが,胎盤と接する84×43mmの小嚢胞からなる腫瘤を認めた.腫瘤はカラードプラ法にて血流を認めなかった.右卵巣に2つ黄体像を認めたことから,双胎妊娠の可能性があり,胎児共存奇胎を疑い妊娠管理をした.血中hCG 132000IU/L,β‐hCG 161ng/ml,甲状腺機能は正常範囲内,羊水穿刺を施行し正常核型であった.その後,腫瘤は妊娠18週,98×57mmに増大したが,以後縮小傾向となり,妊娠36週には腫瘤が確認できなくなった.また,血中hCG・β‐hCGは週数経過とともに下降した.胎児発育は良好であり,羊水量は正常範囲内,合併症の発症もなく経過し,妊娠39週に2578gの女児を得た.胎盤は350g,185×130×22mm,側方に径10mmまでの嚢胞性病変を数個認めた.その嚢胞性病変は病理組織診断上,胞状奇胎や悪性所見を認めず,変性壊死に陥った胎盤組織が嚢胞状の変化をきたしたものであった.また,臍帯は胎盤中央付着で過捻転があり胎盤付着部では径4mmに狭窄しており,嚢胞性病変は,血流障害による胎盤壊死の可能性も考えられた.分娩後80日まで絨毛性疾患の続発症も認めていない.
【まとめ】
妊娠中の超音波断層法にて子宮内腔に胎児・胎盤以外に多数の小嚢胞からなる腫瘤を認めた場合,胎児共存奇胎や胎盤腫瘍,双胎1児死亡,出血などが考えられる.胎児共存奇胎は22,000〜100,000例に1例とされており,不妊治療後妊娠例に増加傾向があると考えられている.確定診断は病理診断や遺伝子診断であり,妊娠中には困難である.また,妊娠中の合併症の増加・続発症発生率は高値であるが,胎児が生存可能な週数まで妊娠を継続しても続発症の発生率は上昇しないとの報告がある.しかしながら,本症例の様に,胎児共存奇胎や胎盤腫瘍ではないこともあり,慎重な対応が必要であると考えられる.