Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
産婦人科:産科

(S422)

良好な転帰をとった妊娠24週双胎前期破水の一例

A case of pPROM of twin at 24weeks of gestation that had good prognosis

上原 彩子, 谷垣 伸治, 上原 一朗, 井上 慶子, 松澤 由記子, 橋本 玲子, 嘉治 真彦, 岩下 光利

Ayako UEHARA, Shinji TANIGAKI, Ichiro UEHARA, Yoshiko INOUE, Yukiko MATSUZAWA, Reiko HASHIMOTO, Masahiko KAJI, Mitsutoshi IWASHITA

杏林大学付属病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Kyorin University Hospital

キーワード :

【緒言】
妊娠28週未満の前期破水(pPROM)症例は,在胎週数が早いほど予後不良となる為,可能な限り妊娠期間を延長させるべきである.しかし,子宮内炎症を認める場合は,早期に児を娩出しなければfetal inflammatory response syndrome(FIRS)をきたし,児に敗血症,脳室周囲白質軟化症,頭蓋内出血,壊死性腸炎,慢性肺疾患などを生じさせ予後不良となることから,分娩の時期の決定は難しい.また,妊娠26週未満の破水例では羊水量が保たれている児の予後は良好であるが,羊水過少例は妊娠期間を延長しても,肺低形成を高率に生じ,きわめて予後不良である.今回我々は,妊娠24週に前期破水を来した二絨毛膜二羊膜性双胎に,胎児肺形成を評価し保存的管理を行い,良好な予後を得た一例を経験したので報告する.
【症例】
24歳0経妊0経産.hMG-hCG療法後三胎妊娠成立し,他院にて減胎手術を施行後,妊娠14週二絨毛膜二羊膜性双胎にて当院紹介となった.妊娠18週子宮収縮と性器出血を認め,切迫流産の診断で入院した.
妊娠24週先進児が破水し,破水翌日には,破水児の羊水ポケット(AFP)は0cm,未破水児のAFPは2.5cmとなった.母体感染徴候は認めなかった.羊水が再貯留しない場合,破水児は肺低形成を生じる可能性が高い.しかし,妊娠24週における新生児の予後は悪いことから,未破水児の発育を期待し,患者と家族に十分説明の上,妊娠継続した.その間,超音波断層法にて肺面積,肺胸郭断面積比,胸囲腹囲比,羊水量を測定,胎児呼吸様運動を観察し,胎児の肺形成を評価した.また妊娠28週以降は,腟に流出した羊水中肺サーファクタントプロテインA(SP-A)を測定した.
破水児のAFPは2cm以上に増加することはなく,超音波断層法における評価項目のうち肺面積は正常下限以下であり肺低形成が推測されたが,他の超音波断層法による評価項目は肺低形成を示唆しなかった.胎児心拍モニタリングはreassuring fetal statusを示した.SP-Aは,妊娠28週62.8ng/ml(カットオフ参考値420ng/ml)から妊娠31週303ng/mlまで増加し肺成熟傾向が示唆された.妊娠31週4日陣痛発来したため帝王切開術を施行した.第1子(破水児)は1419g,アプガールスコア1分値4点,5分値8点.陥没呼吸著明であり人工呼吸器管理,サーファクタント投与を行った.胸部単純写真上明らかなRDSの所見を認めず,Dry lung syndromeと考えられた.日齢5には呼吸状態改善したため抜管し,以降合併症なく発育順調であり,日齢70(修正妊娠41週4日)に退院した.第2子(未破水児)は1313g,アプガールスコア1分値3点,5分値8点.出生時一過性多呼吸のため酸素投与のみ行い,経過良好にて第1子と同日退院した.
【考察】
双胎妊娠におけるpPROM症例は,単胎妊娠と異なり羊水量が少ないことによって生じる圧迫の影響が明らかでなく,羊水量も誤って評価されることがある.また肺形成の評価は,超音波断層法による確実な評価ができないことから,複数の評価項目を測定することや,他の方法も参考にする必要がある.本症例の早期娩出は,未破水児も早産のリスクを負うことになることから,分娩時期の決定は熟慮が求められる.