Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児心機能・血流

(S420)

眼動脈血流速度波形の解析による漢方薬の駆血効果の検証

Effects of the herbal medicine - using the analysis ophthalmic artery flow velocity waveform.

塩田 敦子, 秦 利之

Atsuko SHIOTA, Toshiyuki HATA

香川大学周産期学婦人科学

Perinatology and gynecology, Kagawa University

キーワード :

【背景】
駆血剤である桂枝茯苓丸は,眼球結膜血管の微小循環を改善することが知られている.90年代より,周産期医療の現場では,臍帯動脈,胎児中大脳動脈,母体子宮動脈に超音波ドプラ血流測定法を用いて,胎児胎盤循環不全の有無の評価,子宮内胎児発育遅延,妊娠高血圧症等の予知に利用して成果をあげている.また我々は妊娠高血圧症候群や糖尿病合併妊婦において母体眼動脈の超音波ドプラ血流測定を行って,正常妊婦に比べ有意に血管抵抗が低いという報告をしている.脳神経外科領域では,眼動脈ドプラ血流測定法を用いて内頚動脈の血管性病変を評価する試みがいくつかなされている.眼科領域では家兎に桂枝茯苓丸を投与し,網膜中心動脈,外眼動脈の血流速度を超音波ドプラ血流測定法を用いて測定,血管抵抗は大きな変化はなく,平均流速はどちらも増加し,特に網膜中心動脈で長期間有意に増加していたという報告もあるが,ヒトでの報告はない.
駆血剤が血流を改善する効果があるのならば,超音波ドプラ法による血流速度波形の解析においてもその効果が示されるものと考えた.
【目的】
駆血剤の効果を,脳内血流を非侵襲的に評価できる眼動脈において,超音波ドプラ血流測定法を用いて,客観的かつダイナミックに評価し,血の自他覚所見の変化とあわせて明らかにする.
【対象と方法】
対象は当院当科外来において頭痛やのぼせ,不眠,いらいら等血症状を訴えた患者16名である.問診,血スコアにて自他覚的評価を行い,桂枝茯苓丸7.5g/日で2週間処方した.
この研究は当院の倫理委員会にて承認をうけたものであり,書面で患者に承諾を得た.内服前後に臥位,閉眼状態で左右の上眼瞼より眼動脈(OA)を描出,超音波ドプラ血流測定法を用いて評価,PI(pulsatility index) ,PSV(peak systolic velocities)について内服前後の値をpaired-t検定を用いて検討した.
【成績】
16名の年齢は平均43±13.9(24〜66)歳であった.内服前後では自覚症状の改善が7割でみられ,血スコアは平均4点減少し,ともに改善がみられた.OAにおけるPIは,1.94±0.13から1.76±0.12に減少(P=0.062)した.PSVについても36.7±1.54から32.86±1.39へと有意差をもって減少(P=0.009)した.
【結論】
駆血剤の効果は,血管抵抗が減少し,血行が改善したことがPIの減少となって現れたと思われる.また血管が弛緩し,抵抗が減少,流速が低下したことがPSVの減少という形をとったと考えられる.超音波ドプラ血流測定法を用いて,脳内血流を非侵襲的に評価できる眼動脈の血流速度波形の解析を行い,客観的かつダイナミックに駆血剤の効果を知ることができた.