Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児2

(S418)

特異的なumbilical venous pulsationsの発生機序について

Atypical mechanism of umbilical venous pulsations

青木 昭和, 原田 崇, 中山 健太郎, 宮﨑 康二

Showa AOKI, Takashi HARADA, Kentarou NAKAYAMA, Kouji MIYAZAKI

島根大学医学部産科婦人科

Obstetrics & Gynecology, Shimane University Faculty of Medicine

キーワード :

【はじめに】
臍帯静脈血流波形pulsation(UV-P)はうっ血性心不全で生じ,2峰性では更に重症と言われる.今回,特異的要因として正常心機能でもUV-Pを認めた肝外shunt型の門脈体循環シャント(PSS)1例と軽度心機能低下の段階からUV-Pを認めた21 trisomyによる一過性骨髄異常増殖症(TAM)の1例を経験したので報告する.
【症例1】
妊娠32週にてFGRと臍帯動脈血流PI (UA-PI)の高値(1.76)を認めた.妊娠37週時に胎児門脈の描出が認められず,UA-PI上昇, 中大脳動脈血流PI (MCA-PI )低下,UV-P(図1),PLI上昇(0.68)(図2)を認めた.胎児心機能は正常であったが37週6日NRFSのため帝王切開にて2030gの男児を娩出.Apgar8/9,UA-pH7.18で心不全治療は全く必要としなかった.日齢19にガラクトース血症を指摘され門脈低形成,肝外shunt型のPSSと診断された.出生前のPLI著増はa波がPSSによりスチールされ増大した為と思われ,UV-Pの成因は下大静脈波形がPSSによりそのまま臍帯静脈まで反映されたものと思われた.
【症例2】
妊娠31週に胎児肝・脾腫大,軽度の腹水・心嚢液の為紹介.鼻骨低形成を認め21 trisomyによるTAMを疑うも胎児染色体検査は本人希望せず行えなかった.UA-PI 1.2,MCA-PI 1.4であったが2峰性のUV-P(図3)を認めた.静脈管は拡張しS-peakは143cm/sと上昇していたがPIは0.73と正常で逆流もなかった.PLI0.39でCTAR0.47,combined cardiac output(CCO)は1387 ml/min(左721,右666)と高値であった.妊娠34週にてNSTはRFSであったが,UA-PI 1.9,MCA-PI 1.1,臍帯動脈の拡張期途絶,腹水増加を認めた.また左心COが430 ml/minと急に低下し始め,大動脈狭部拡張期逆流の増大(isthmus blood flow index,IFI =0.51)(図4)も認めた為brain sparingに加えcardiac dysfunctionと判断し,帝王切開を施行.2520g,女児をApgar2/6,UA-pH7.31で娩出.児はTAMの診断にて加療を受け日齢153で軽快退院となった.UV-Pの成因は肝腫大により静脈管循環のoverloadとなり圧調節機能が低下し下大静脈波形がそのまま臍帯静脈まで反映されたものと思われた.
【まとめ】
UV-Pは心臓以外の様々な要因で生じ得る為慎重な評価が必要である.