Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児2

(S418)

分娩入院時の超音波検査による羊水量測定の有用性に関する検討

Significance of measurement of amniotic fluid amount by ultrasonography at admission for birth

竹中 慎, 長谷川 潤一, 三村 貴志, 松岡 隆, 市塚 清健, 岡井 崇

Shin TAKENAKA, Junichi HASEGAWA, Takashi MIMURA, Ryu MATSUOKA, Kiyotake ICHIZUKA, Takashi OKAI

昭和大学産婦人科学教室

gynecology & obstetrics,showa university

キーワード :

【目的】
当院では,分娩目的で入院した妊婦全例に対し,外来での評価に加えて最新の胎児情報を把握するために入院時超音波検査を行い,胎向,胎児推定体重,amniotic pocket (AP),頚部巻絡の有無,胎盤異常の有無などの確認を行っている.この入院時超音波検査が,より良い分娩管理の手助けとなっているかを検討することを目的として以下の研究を行った.
【対象と方法】
2006〜2008年に,分娩目的の入院時に超音波検査を施行した単胎症例(妊娠37〜41週)1482例のうち,予定帝王切開症例と前期破水症例を除いた966症例を対象とし,それを3群に分類し,以下の検討を行った.A群:外来時で羊水過少と診断され,分娩誘発入院となった症例,B群:外来では羊水過少を指摘されず,陣発入院時に初めて羊水過少が認められた症例,Control群:正常羊水量の症例.
1)各群の割合についての検討
2)急速遂娩の頻度の検討
3)緊急帝切の頻度の検討
4)急速遂娩を予測する羊水量の診断精度の算出:入院時のAPの値について急速遂娩に対する感度と特異度を算出しROC曲線を作成した
なお,羊水過少の診断は,Chamberlain PFらのAPの測定方法を用い,20mm未満の場合を羊水過少と診断した.
【結果】
1)A,B,Control群はそれぞれ,26例(2.7%),75例(7.8%),865例 (89.5%)で,羊水過少症例はA群とB群合わせて101例(10.5%)であった.2)A,B,Control群でそれぞれ,7例 (26.9%),12例 (16.0%),68例 (7.9%)であった(p<0.05).全羊水過少例の18.8%に急速遂娩を要した(p<0.05).3)A,B,Control群でそれぞれ,4例 (14.3%),2例 (2.7%),24例 (2.6%),羊水過少症例はA群とB群合わせて6例(5.9%)であった.4)入院時APの分布は5mm-97mmであった.得られたROC曲線より急速遂娩を予測する最も適切なAP値は21mmとなり,陽性的中率:12.8%,陰性的中率91.6%,感度23.6%,特異度83.8%であった.
【考察】
本研究により,最後の妊婦健診から陣発入院までの間に羊水量の減少する症例が少なくないことが示され,入院時に羊水過少と診断された群における急速遂娩の頻度は,外来で同診断を受けた症例と比べれば低いものの,羊水量正常群と比較して有意に高く,これらの症例においても厳重な胎児心拍モニタリングが必要であると思われた.また,羊水過少の診断基準がAP<20mmに設定されていることは急速遂娩を予測する上でも妥当と考えられた.以上より,入院時の羊水量観察は胎児環境の最新の情報として重要であり,かつ,その情報は分娩管理に役立つことが示唆された.