須郷 慶信, 本間 綾子, 穴見 愛, 林 聡, 左合 治彦

Yoshinobu SUGO, Ayako HONMA, Ai ANAMI, Satoshi HAYASHI, Haruhiko SAGO

国立成育医療センター周産期診療部レジデント

Resident, Department of Perinatal Medicine，National Center for Child Health and Development

キーワード :

【目的】
現在，出生前の胎児肺低形成の評価としてLung to head ratio（LHR）が用いられている．特に胎児横隔膜ヘニルア（CDH）の肺低形成を評価する上で重要な指標となっている．CDH症例のLHRは妊娠週数が進むにつれて増加するといわれ，LHRによる肺低形成の評価が困難な場合があり，最近では正常胎児のLHRで補正したObserved to expected LHR with gestational age（O/E LHR）が提唱されている．今回我々は，当センターにおける正常胎児のLHRのデータを測定し，妊娠週数における正常値の作成を行った．
【対象・方法】
国立成育医療センターにて2007年11月から2008年2月までの妊娠18週から35週の妊婦に対して胎児スクリーニング超音波をおこない，そのなかで胎児異常が指摘されなかった329例を対象とした．方法としては，LHRはUCSF法・Long法・Area法の3つの方法で左右に分けて測定した．
【結果】
平均LHRのUCSF法では，左LHR 妊娠20週1.28・妊娠30週1.82，右LHR妊娠20週2.75・妊娠30週4.45であった．Long法では，左LHR 妊娠20週1.47・妊娠30週2.52，右LHR妊娠20週2.14・妊娠30週3.82であった．Area法では，左LHR 妊娠20週2.30・妊娠30週3.48，右LHR妊娠20週3.78・妊娠30週5.62であった．3法左右ともに妊娠週数が進むにつれて増加することがわかった．UCSF法・Long法・Area法のmeanは異なるが，それぞれの測定法における相関を認めた．
【結語】
今回当センター正常胎児における妊娠週数ごとのLHRの正常曲線を作成した．正常胎児のLHRをUCSF法・Long法・Area法で測定し，妊娠週数が進むにつれてすべて増加するこが確認された．またこれら3法間の測定値それぞれに相関を認めたため，3法いずれにおいても正常胎児のLHRの評価として使用可能である．これらを指標としてO/E LHRによるCDHの肺低形成の評価や胸郭低形成を伴う胎児疾患の肺低形成の評価を行うことが有用となる可能性が示唆された．