Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児2

(S416)

総肺静脈還流異常症を出生前に検出する胎児心エコースクリーニング法の検討

Prenatal echocardiographic screening for detecting total anomalous pulmonary venous connection.

吉越 和江1, 松本 二朗2, 北川 優2, 梅沢 勝弘2, 西中 健二2, 鬼本 博文3, 岡本 哲4, 菱谷 隆5, 川瀧 元良6

Kazue YOSHIKOSHI1, Jiro MATSUMOTO2, Msaru KITAGAWA2, Katsuhiro UMEZAWA2, Kenji NISHINAKA2, Hirofumi KIMOTO3, Satoru OKAMOTO4, Takashi HISHITANI5, Motoyoshi KAWATAKI6

1双鳳会山王クリニック超音波検査室, 2山王クリニック産婦人科, 3ドームクリニック小児科, 4オカモトレディースクリニック産婦人科, 5埼玉県立小児医療センター循環器科, 6神奈川県立こども医療センター新生児科

1The Division of Ultrasound,Sannoh Clinic, 2Department of Obstetrics and Gynecology,Sannoh Clinic, 3Department of Pediatrics,Dome Clinic, 4Department of Obstetrics and Gynecology,Okamoto Ladies Clinic, 5Department of Cardiology,Saitama Children’s Hospital, 6Department of Neonatology,Kanagawa Children’s Medical Center

キーワード :

産科一次施設である当院では,超音波技師が妊娠中期に胎児超音波スクリーニング検査をおこなっている.先天性心疾患で総肺静脈還流異常症(TAPVC)は胎児診断が最も困難な代表的疾患である.当院で2008年に1606人のスクリーニングを施行し,3名のTAPVCを経験した.そのうち2名は心内奇形のないisolated type,1名はAsplenia合併であり,胎児心エコーでいくつか異常所見は確認されていたが,いずれも出生後に診断され胎児診断はできなかった.今回この経験から,重症度の高いTAPVCを出生前に検出できる胎児心エコースクリーニング法の必要性を感じ,スクリーニング手順を再考してみたので報告する.使用機種はGE社 Voluson E8.
【症例1 上心臓型1a+1b】
34歳,1P,既往なし.29週で羊水過多,胎児スクリーニング依頼で,当院超音波外来受診.ECD DORV 内臓錯位のため,3次施設紹介.Asplenia CAVC SV DORV TAPVCの結果であった.途中胸水を認めた.分娩施設は他施設をすすめたが最終的に当院で38週,2854gで出生.直後からパルスオキシメーターでSpO2 50台のチアノーゼを認め3次施設に緊急搬送緊急手術するも,救命できず.詳細は不明であるが,手術所見から共通肺静脈腔閉鎖と思われた.
【症例2 心臓型IIa】
21歳,1P,既往なし.26週に胎児エコースクリーニング検査施行.心横経27mm,CTAR28%,小さい左房を認めた.LSVCはなく,左房への乱流含む肺静脈様波形の血流(流速20cm/s)と左房後壁の隔壁を認めたが,39週に3222gで出生.12時間後SpO270台のチアノーゼを認め新生児搬送.肺うっ血高度,肺静脈が共通肺静脈から冠状静脈洞(流入部で狭窄)に還流するTAPVC(IIa)で緊急手術,術後経過良好にて退院.
【症例3 下心臓型III】
29歳,0P,既往なし.26週胎児超音波スクリーニング検査施行.心横径25mm,CTAR27%,左房が小さく,肺静脈左房還流の確認はカラードプラーの流速を20cm/sに下げても困難であった.肺静脈のドプラー波形は定常流で流速は10cm/sであったため,肺静脈狭窄が疑われた.39週に2856gで出生.2時間後からチアノーゼを発症,SpO270%のため新生児搬送.垂直静脈が静脈管に注ぐ(流入部で狭窄)下心臓型TAPVC(III),高度肺うっ血のため緊急手術,術後経過良好,退院.
【考察】
TAPVCの検出は,カラードップラーで左房に肺静脈が還流していないことで行っていた.TAPVCを見逃さないためには,左房の大きさ,左房内の異常構造の有無を確認する必要性を感じた.左房が小さい場合は,共通肺静脈,垂直静脈の存在や結合部位の同定,右房に肺静脈が還流していることなどを確認してTAPVCの予測が出来るのではないかと思われた.STICデータを後方視的に検討するとTAPVCはスクリーニング可能であったため,TAPVCのスクリーニングには保存された動画やSTICを見直すことは有用である.なお,胸水の存在,低速で(より低速であるほうが重症)定常流の肺静脈,カラードップラーで乱流を認めたものは,高度の肺静脈狭窄の可能性があり出生直後に重篤な症状が出現する可能性がある.
胎児心臓病研究会の胎児心エコー検査ガイドライン(レベル1)から考えると,四腔断面での左右差,左房が小さいことがTAPVC検出のポイントになると思われ,この場合は精査にまわす必要性がある.