Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児1

(S415)

先天性小腸閉鎖症の出生前診断に3次元超音波法が有用であった1例

A case report; Prenatal diagnosis of congenital jejunal atresia by 3D ultrasonic images.

竹内 裕一郎1, 高橋 正国1, 山内 延広1, 木内 誠2

Yuichiro TAKEUCHI1, Masakuni TAKAHASHI1, Nobuhiro YAMAUCHI1, Makoto KIUCHI2

1三原赤十字病院産婦人科, 2公立八鹿病院産婦人科

1Obstetrics and Gynecology, Mihara Red Cross Hospital, 2Obstetrics and Gynecology, Yoka Hospital

キーワード :

【はじめに】
先天性小腸閉鎖症は超音波断層法で腸管の拡張像などにより出生前診断が可能だが,胎動や胎位や胎向により十分な検査が困難なこともある.今回3次元超音波法が出生前診断に有用であった先天性小腸閉鎖症の1例を報告する.
【症例】
母体は35歳,3回経妊2回経産で,両側卵巣皮様嚢腫摘出術以外,特記すべき既往歴はなく,今回妊娠初期より当科を受診していた.妊娠24週までは特に異常所見はなかったが,平成19年2月21日(28週0日)の妊婦健診時に超音波断層法で胎児上腹部中心に嚢胞状に拡張した像を数個認め,AFIも23.1と多めであった.先天性小腸閉鎖症が疑われ,28週6日の再診時には羊水過多になり胎動も多かったため,3D検査も加え精査を行った.保存したvolume dataを再構築して,以下の画像解析により診断を行った.(1)多方向の平行連続スライスによる各断層像の観察,(2)画像のグレー値を反転させ腸管の走行を立体的に視認,(3)X線モードのような3D透過画像,(4)表面構築画像とSTIC.これらによりまず他の先天性奇形と胎便性腹膜炎を認めないことを確認後,拡張した腸管の走行と連続性と解剖の確認,壁と内容液の性状を確かめた.内容液輝度は低く,腸管壁の肥厚や不整もなく,盲端のある拡張は十二指腸曲部分より肛門側に及び,その長さや位置から閉鎖部は空腸と推察され,先天性空腸閉鎖症が疑われた.以後AFIの増大と拡張の緩徐な進行があり,35週4日に早産で2520gの女児が出生し,出生後診断は膜様型先天性空腸閉鎖症で,経鼻胃管による減圧後小児外科で手術を行い以後経過良好である.
【考察】
保存した3Dデータは情報量が多く,胎向が変わっても毎回比較しやすく,検査後多くの画像解析を行える.多断面で腸管の走行や拡張の程度や連続性を確認でき,3D透過画像を用いれば,出生後のX線画像と似た像が得られ,またグレー値を反転させたモードでは嚢胞性管腔病変であるため血管走行を3D化するように立体構造が観察できた.それに透過画像を組み合わせれば腸管が造影剤を用いたように高輝度となり造影透視画像をイメージできた.先天性小腸閉鎖症は3D検査を加えることにより質的診断も可能となり,今回のように羊水過多が合併して胎動過多や仰臥位低血圧症候群が懸念される場合は,母体の負担軽減に関しても有用と考えられた.