福田 順子, 田中 幸子, 仲尾 美穂, 上田 絵理, 高倉 玲奈, 高野 保名, 中泉 明彦, 井岡 達也, 石田 哲士, 吉岡 二三

Junko FUKUDA, Sachiko TANAKA, Miho NAKAO, Eri UEDA, Rena TAKAKURA, Yasuna TAKANO, Akihiko NAKAIZUMI, Tatsuya IOKA, Tetsushi ISHIDA, Fumi YOSHIOKA

地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター検診部

Osaka Medical Center for Cancer and CVD, Cancer Survey

キーワード :

切除手術の行なわれた粘液性嚢胞腺腫3例を経験し，超音波検査時のボリュームデータおよびソナゾイド造影超音波検査が診断に有用であったので報告する．
【検査の方法】
Volume Dataにはメカニカルスイープ方式のコンベックス型プローブ（LOGIQ7（GE）：5‐2MHz，HD11XE（PHILIPS）：8-4MHz）を使用し，関心病変の全域を含む膵実質が良好な条件で描出できるスキャン断面を選択して収録した．造影超音波検査には，LOGIQ7（GE）あるいはEUB8500（HITACHI）を使用，MIは0.20付近，Focusは関心病変の下端からやや深めに設定した．造影剤は肝限局性病変の鑑別ないしは転移性肝癌の存在診断を主目的として文書による同意の上ソナゾイドを使用，1回の投与量は0.015ml/kgであった．造影3D画像の収録にはソナゾイド投与後約10秒からメカニカルスイープ方式のスキャンを連続7-8回繰り返した．
検査終了後，ボリュームデータから①3Dイメージによる全体像の把握，②Virtual Sonographic Cystoscopyの作製（嚢胞の一部を切り取り，嚢胞の内腔を覗き込むような3D画像），③複数断面を一定のスライス幅で並べて表示，などを行い切除標本ならびにMRI，CTなどの他画像との対比を行なった．
【症例】
3症例はいずれも女性，年齢は40〜50歳代，体尾部に隔壁を伴う球形の嚢胞を認めた．大きさは25×21mm（I），48×36mm（II），126×97mm（III）．IはVirtual Sonographic Cystoscopyを作製すると隔壁で大きな腔に分かれ，内腔面は平滑，結節はなし，MCAの肉眼形態的特徴をとらえていた．II，IIIは造影3Dイメージで薄い隔壁とcyst in cystの構造が明瞭に造影され，IIIの長径13cmの大きな嚢胞においても，造影3Dイメージにより内腔すべてを染影のタイミングをのがすことなく観察できた．造影前に嚢胞内デブリ様の高エコー像を認める症例では隔壁のみが造影され，充実部分ではなく粘液性のものだと確認できた．造影CTと比較すると薄い隔壁の造影感度は優れており，薄い隔壁は切除標本でも確認できた．
【まとめ】
Volume Dataにより，①2Dでは表示し得ない全体像の把握，②Virtual Sonographic Cystoscopyによる内腔面の平滑さ，結節の有無の観察，③任意の断面を選んでの他画像との客観的対比が可能となった．
造影超音波検査により，①薄い隔壁が造影され明瞭に描出でき，②膵実質と腫瘍の境界および腫瘍自体の輪郭が明瞭に描出され，③近傍の拡張のない主膵管の描出も容易となった．また，造影3Dイメージにより染影のタイミングを逃がすことなく腫瘍の全体像をとらえることができた．
以上のことから，ボリュームデータおよび造影超音波検査を併用することにより，“共通の被膜を有する球状の多胞性嚢胞でcyst in cystの構造を示す”という粘液性嚢胞腺腫の肉眼形態的特徴をよくとらえることができた．これらの所見は切除標本の肉眼所見とよく一致した．また，他画像と比較して薄い隔壁の描出については造影3Dエコーの感度が非常に高く，他の所見についても造影MDCTや造影MRIに劣らない診断情報が得られた．今回粘液性嚢胞腺癌は含まれていなかったが，今後症例数を増やして検討していきたい．