英文誌(2004-)
一般口演
消化器:膵
(S409)
膵癌と自己免疫性膵炎の鑑別診断におけるソナゾイドの使用経験
Differential diagnosis of pancreatic cancer and autoimmune pancreatitis by contrast enhanced US with Sonazoid
菅野 敦
Atsuhi KANNO
東北大学病院消化器内科
Department of Gastroenterology,Tohoku University Hospital
キーワード :
(背景)(1)自己免疫性膵炎は限局型の腫瘤を形成することがあり,膵癌との鑑別が困難なことがある.(2)第二世代超音波造影剤ペルフルブタン(ソナゾイド)は,レボビストのようにバブルを間欠的に破壊しながら画像を得るのではなく,微少気泡を共振させその信号を連続的に観察することで血流を評価することが特徴であり,各臓器の画像診断への応用が期待されている.
(目的)自己免疫性膵炎と膵癌の鑑別におけるソナゾイドを用いた造影超音波の有用性を検討すること.
(対象・方法)対象は2008年3月から12月まで入院し,ソナゾイドによる造影超音波を施行し得た通常型膵管癌(以下Pca)20例と自己免疫性膵炎(以下AIP)6例である.Pcaは手術もしくはEUS-FNAにて組織学的に診断し得た症例で,AIPは診断基準に合致し,ステロイドの投与にて膵腫大の改善が確認出来た症例である.診断装置にはALOKA社製α10を使用した.造影時のMI値は0.3とした.ソナゾイド1バイアルを2mlの蒸留水にて懸濁し,0.015ml/kgで静注した.造影の観察は超音波装置内のハードディスクに保存し,後に付属の解析ソフトにてTime Intensity Curve(TIC)を作成した.腫瘤部内にROIを設定し,造影が開始される時の輝度値を0とし,そこから造影された最大の輝度レベルを(1)ピーク値,2分後の輝度レベルを2分値と定義する.ピーク値まで上昇するスピードを(2)ピーク速度,ピーク値から2分値まで徐々に輝度値が消退するスピードを(3)消退速度と定義し,Pca群とAIP群で比較した.両群間はMann Whitney U testで比較した.
(結果)Pca:AIPの平均値 (1)ピーク値level(62:99 p=0.024)(2)ピーク速度level/sec(7.2:11.2 p=0.07)(3)消退速度 level/sec(0.71:0.98 p=0.22)で(1)ピーク値で有意差を認めた.つまり,自己免疫性膵炎は強く造影され,膵癌は造影されにくい結果であった.造影速度に有意な差を認めなかった.
(考察)PcaはCTの特に後期相でしばしば造影効果を示し,診断が困難な場合がある.ソナゾイドはヨード造影剤と異なり血管外漏出がないこと,造影CTとは異なり,連続的に観察が可能であることから,時間分解能に優れていること,更にTICを描くことにより,腫瘤の血流を詳細に検討することが可能であることからPcaとAIPの鑑別診断に有用となる可能性が示唆された.