Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:膵

(S408)

尾側主膵管拡張を伴わない浸潤性膵管癌12切除例の検討

Ultrasonographic Findings of Invasive Ductal Carcinomas with no dilatation of main pancreatic duct

只野 薫, 木村 裕美, 蓮尾 茂幸, 武山 茂, 中島 幸恵, 小林 幸子, 中村 智栄, 橋本 碧, 内田 香織, 水口 安則

Kaoru TADANO, Hiromi KIMURA, Shigeyuki HASUO, Shigeru TAKEYAMA, Yukie NAKAJIMA, Sachiko KOBAYASHI, Tomoe NAKAMURA, Midori HASHIMOTO, Kaori UCHIDA, Yasunori MIZUGUCHI

国立がんセンター中央病院臨床検査部

Clinical Laboratory,National Cancer Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
浸潤性膵管癌は膵頭部足側端,膵鉤部,膵尾部端から発生したものを除き,ほとんどの場合,尾側主膵管拡張を伴う.しかしながら,上記以外の部位に位置するにもかかわらず尾側主膵管拡張を伴わない浸潤性膵管癌を経験することがあり,この場合,診断に苦慮する.今回,我々はこれらの浸潤性膵管癌12切除例における超音波所見と病理組織学的所見について検討したので報告する.
【対象と方法】
2002年1月〜2008年10月に当検査室における超音波検査(US)にて,浸潤性膵管癌と診断し,切除後病理組織診断で同診断であった217病変中,USにて尾側主膵管拡張を認めなかった12病変を対象とした.膵頭部足側端,膵鉤部,膵尾部端に存在し,通常主膵管拡張を伴わない病変は除外した.年齢は40〜79歳(平均62.8歳),男女比は6:6であった.超音波診断装置は,東芝社製Aplioを使用し,4病変にレボビストを用いた造影超音波を施行した.
【結果】
[超音波所見]USにて尾側主膵管拡張を伴わない浸潤性膵管癌の頻度は5.5%(12/217病変)であった. 腫瘍径は11〜46mm(平均26.2mm),存在部位は膵頭部7病変,膵体部5病変であった.形状は不整形10病変,類円形2病変.境界明瞭9病変,不明瞭3病変.全病変で輪郭不整,低エコーを呈していた. 棘状突起様構造を8病変で認めた.腫瘍が膵頭部に存在する7病変中,肝外胆管拡張を認めた病変は2病変(ERBDチューブ挿入後1病変),拡張を認めなかった病変は5病変(ERBDまたはPTBDチューブ挿入後2病変)であった.カラードプラは10病変で施行し,10病変とも明らかな血流信号を認めなかった.造影超音波を施行した4病変では,それぞれ早期相で造影欠損像,辺縁優位な造影効果,リング状造影効果,周囲と同等の造影効果を認めた.[病理組織所見]組織型は全病変管状腺癌で,高〜中分化型3病変,中分化型7病変,中〜低分化型1病変,低〜中分化型1病変であった.主膵管は全病変で腫瘍境界部または周辺を走行していた.主膵管に一部でも腫瘍浸潤を認めた病変は10病変,全く腫瘍浸潤を認めなかった病変は2病変であった.肝外胆管はドレナージチューブを挿入されていた3病変で腫瘍浸潤を認めた.
【考察】
今回検討した症例の主膵管は腫瘍境界部または周辺を走行していた.主膵管に一部腫瘍浸潤を認めた病変が多かったものの,尾側主膵管拡張をきたすほどの強い影響を与えていなかった.Bモード所見では,不整形,境界明瞭の病変が多く,全病変で輪郭不整,低エコーを呈し,棘状突起様構造を認めた病変が多かった.また,カラードプラでは明らかな血流信号を認めず,造影超音波では早期相で腫瘍全体の造影効果を認めない病変が多かった.尾側主膵管拡張を伴わないものの,これらの超音波像より浸潤性膵管癌と診断可能であった.
【まとめ】
膵頭部足側端,膵鉤部,膵尾部端以外の尾側主膵管拡張を伴わない浸潤性膵管癌12切除例について検討した.尾側主膵管拡張の有無に関わらず,腫瘍直接所見の詳細な観察を行い,腫瘍と主膵管の関係,カラードプラあるいは造影所見などを合わせて検討することが,質的診断の向上につながると考えた.