Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:膵

(S407)

膵のVanishing tumor:自然経過で消失した自己免疫性膵炎の局在病変?

Vanishing tumor of the pancreas. A pancreatic mass was disappeared in the natural course of autoimmune pancreatitis without steroid therapy.

小山 里香子, 田村 哲男, 小泉 優子, 今村 綱男, 奥田 近夫, 竹内 和男

Rikako KOYAMA, Tetsuo Tamura, Yuko KOIZUMI, Tsunao IMAMURA, Chikao OKUDA, Kazuo TAKEUCHI

虎の門病院消化器内科

Gastroenterology,Toranomon Hospital

キーワード :

【目的】
本邦の自己免疫性膵炎(AIP)臨床診断基準(2006)では,膵画像検査で特徴的な主膵管狭細像と膵腫大を認めることが必須項目である.特に腹部超音波像(US)では膵のびまん性あるいは限局性の腫大を認め,腫大部は低エコー像を示す.このうち部分的腫大や低エコー腫瘤様を呈するものは約3割といわれている.AIPはPSL治療が奏効するが自然寛解する症例もある.今回我々は膵限局性病変が自然経過観察のみで消失したIgG4関連膵病変を経験したので報告する.
【対象】
1986年〜2008年までに当院で経験したAIPは47例.初回治療として41例がPSL治療,3例が膵癌を疑われ手術,3例が無治療で経過観察.経過観察の3例は全てびまん性膵腫大を呈し,1例は自然寛解後に膵外病変で再発しPSL治療,2例は不変.今回は上記47例に含まれないAIP疑診2例であるが,USで当初限局性低エコー腫瘤像を呈し自然経過で消失した例を呈示する.
【症例1】
56歳男性.05年1月のUSで膵体部に径8mm大の低エコー腫瘤を指摘.06年1月には約3cm大(図1)に増大.ERCPでは主膵管に狭細像を認めず正常.IgG4は1010mg/dlと高値でありAIPが疑われたが診断基準は満たさず.10月のUSで膵体部腫瘤は2cm大と縮小したが尾部にムラ様低エコー域が出現.07年1月にはいずれの病変も消失した(図2).
【症例2】
86歳男性.06年2月のUSで膵頭部に径26mm大の低エコー腫瘤を指摘.4月には33mm大と増大し主膵管も4mmに拡張.MRCPでは膵頭部主膵管に狭窄像と尾側膵管の拡張,下部胆管の狭窄を認め膵癌を疑う所見であった.86歳と高齢であり以後無治療で経過観察.12月には膵頭部腫瘤は径21mm大と縮小し,膵全体のエコー輝度が低下して境界不明瞭となった.07年2月には膵頭部腫大は改善し主膵管拡張も消失したが膵全体は低エコーに描出された.IgG4は312mg/dl.
【まとめ】
AIPの小結節性病変はその主膵管像から現在の診断基準では確定診断できない症例が多く,また膵癌との鑑別にも苦慮する場合が多い.自然経過を追った報告例では限局性からびまん性病変に拡がる例やびまん性膵腫大が改善した例などさまざまあるが,今回のように限局性病変が自然経過観察のみで消失する経過を追えたAIP疑診例は貴重であり報告した.