Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:びまん性肝疾患

(S404)

術中リアルタイムエラストグラフィによる肝腫瘍の鑑別診断

Differential diagnosis of liver tumors by intraoperative real-time tissue elastography

杉本 博行, 藤井 努, 粕谷 英樹, 金住 直人, 野本 周嗣, 竹田 伸, 中尾 昭公

Hiroyuki SUGIMOTO, Tsutomu FUJII, Hideki KASUYA, Naohito KANAZUMI, Shuji NOMOTO, Shin TAKEDA, Akimasa NAKAO

名古屋大学大学院医学系研究科・消化器外科学

Department of Gastroenterological Surgery,Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

<目的>
次世代超音波造影剤,肝細胞特異的MRI造影剤,拡散強調MRI,PETなどの登場により肝腫瘍の術前診断はより正確になった.しかし,現在でも術中超音波検査により新たに発見される結節も存在し,その鑑別診断や治療方針を術中に判断する必要がある.当科では術中超音波検査にReal-time tissue elastography(以下RTE)を応用し肝腫瘍鑑別診断に役立てている.今回,RTEが実際に有用であった症例につき検討した.
<方法>
2006年4月より2008年3月までに開腹手術を行い肝腫瘍に対し術中RTEを施行した63症例を対象とした.装置は日立EUB8500,EUP-L54Mを用いた.硬さ評価として乳腺超音波エラストグラフィで報告されたTsukuba Elasticity Score (5段階分類で1が柔らかく5が硬い,以下スコア)を用いた.
<結果>
これまでの検討により転移性肝癌(腺癌),肝内胆管癌はスコア4以上(硬い腫瘍),肝細胞癌ではスコア3以下(比較的軟らかい腫瘍),血管腫はスコア1(背景肝と同等の硬さの腫瘍)が標準であることを報告した.今回の63例中,他の術前画像診断で肝内胆管癌と診断された1例でスコア1となり血管腫であった.肝細胞癌と診断された2例がスコア1となり血管筋脂肪腫であった.4例で新たな高エコー結節を認めたがスコア1で血管腫であった.また他に転移性肝癌の症例では8例で高エコーの転移を認め,いずれもスコア4以上であった.
<考察>
外科医による触診は術中に腫瘤の良悪性を判定する重要な診断法であるが,客観性に乏しく情報の共有が不可能であった.術中RTEを用いることにより硬さの評価が客観的に可能となり,情報を共有できる.血管腫は最も多くみられる肝腫瘍であり,術中超音波検査にて偶然発見される場合もある.Bモードで診断できることが多いが,転移性肝癌に見られる場合には鑑別に難渋することもある.RTEを用いることにより簡便に重要な情報を得ることができ鑑別診断がより容易となった.
<結語>
術中RTEは転移性肝癌と良性腫瘍の鑑別診断に有用である.