駒 美佳子¹, 福田 勝彦², 森 雅美¹, 中尾 由佳¹, 井西 千晶¹, 鳥居 裕太¹, 本多 かおり¹

Mikako KOMA¹, Katsuhiko FUKUDA², Masami MORI¹, Yuka NAKAO¹, Chiaki INISHI¹, Yuuta TORII¹, Kaori HONDA¹

¹宝生会PL病院中央検査部, ²宝生会PL病院内科

¹Department of Clinical Labolatory，PLhospital，oosaka，japan, ²Department of Medicine ，PLhospital，oosaka，japan

キーワード :

【はじめに】
　生体内組織の歪みからリアルタイムで組織の硬さ情報を表す，Real-time Tissue Elastography（以下RTE）は，現在までに乳腺・甲状腺・前立腺・膵臓などでその臨床応用が報告されている．これまで我々は，RTEが慢性肝疾患における肝線維化の非侵襲的評価法として有用である事を報告してきた．今回，代表的な肝腫瘍である古典的HCC，転移性肝癌，血管腫に対してRTEを施行し，得られたRTE画像パターンから鑑別診断が可能か検討したので報告する．
【対象および方法】
　対象は，HCC：13例/14結節　転移性肝癌：11例/12結節　血管腫：21例/21結節．全て臨床的に最終診断のついた未治療の腫瘍を対象とした．使用装置は日立メディコ社製EUB8500，プローブはEUP-L52型プローブを使用し，中心周波数は3.5MHzに設定した．走査方法は，フリーハンドにてプローブを保持し，加圧もしくは心拍動にてRTE画像を描出した．ROIは肝腫瘍：肝実質＝1：1〜2に設定し，ROIの範囲全体にRTE画像が表示された時のみ判定可能とし，背景肝に対する腫瘍の色調を相対的に評価した．このようにして得られた腫瘍内部のRTE画像パターンを以下の5種類に分類した．
Category1：緑色均一もしくは肝実質と同等．
　 （C1）青色表示域は腫瘍の10%未満
Category2：緑色ベースに青色が混在．
　 （C2）青色表示域は腫瘍の10〜49%
Category3：緑色と青色が混在．
　 （C3）青色表示域は腫瘍の約50%
Category4：青色ベースに緑色が混在．
　 （C4）青色表示域は腫瘍の51〜90%
Category5：ほぼ青色均一．
　 （C5）青色表示域は腫瘍の91%以上
【結果】
　転移性肝癌はC3-1結節，C4-8結節，C5-3結節．HCCはC3-2結節，C4-12結節となり，転移性肝癌及びHCCでは全例C3以上となり，悪性腫瘍はRTE画像では硬く表示された．血管腫はC1-11結節，C2-6結節，C3-2結節，C4-2結節と様々なパターンが認められたが，C1・C2が全体の81%を占めRTE画像では軟らかく表示されるものが多かった．RTE画像上の腫瘍と周囲肝実質との境界は，転移性肝癌では明瞭なものが3結節 ・不明瞭9結節，血管腫では明瞭2結節・不明瞭19結節，HCCは明瞭10結節・不明瞭4結節であり，転移性肝癌と血管腫では境界は不明瞭なものが多く，HCCでは明瞭なものが多い傾向にあった．
【結語】
我々の今回の検討から，肝腫瘍内部のRTE画像パターン及び背景肝との境界の明瞭度を分析することにより，肝腫瘍の良・悪性の質的診断ができる可能性が示唆された．又検査手技も簡便であり，ルーチン検査中にプローブを持ち替えるだけで行えるという利点がある．RTEによる硬さ情報はあくまで背景肝に対する相対的な評価であるという事を十分注意して評価する必要があるものの，肝腫瘍の鑑別にもRTEは有用であると思われた．今後さらに症例を重ねて検討していきたい．