Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管3

(S401)

Sonazoidによる管腔造影を併用した消化管3D表示の試み

Sonographic virtual endoscopy with luminal enhancement with Sonazoid.

畠 二郎1, 今村 祐志2, 眞部 紀明1, 蓮尾 英明3, 楠 裕明3, 鎌田 智有2, 石井 学2, 春間 賢2

Jiro HATA1, Hiroshi IMAMURA2, Noriaki MANABE1, Hideaki HASUO3, Hiroaki KUSUNOKI3, Tomoari KAMADA2, Manabu ISHII2, Ken HARUMA2

1川崎医科大学検査診断学, 2川崎医科大学内科学食道・胃腸科, 3川崎医科大学総合診療科

1Dept. of Clinical Pathology and Laboratory Medicine,Kawasaki Medical School, 2Dept. of Internal Medicine, Division of Gastroenterology,Kawasaki Medical School, 3Dept. of General Medicine,Kawasaki Medical School

キーワード :

【背景と目的】
 理解しやすい表示法として腹部領域においても3D表示が試みられている.3D表示に際して最も重要なのは個々の断面における明瞭な画像であり,これが確保されないまま3D画像を作成することは分かりにくいだけでなくむしろ誤解を生む原因ともなり得る.消化管では内腔および近接する他の消化管に存在するガスからのサイドローブや,体表から生ずる多重反射などのアーティファクトが3D画像作成上大きな障壁となる.一方静脈内投与を目的として市場化されたSonazoidであるが,これまで我々は陽性造影剤として管腔の造影にも使用可能であることを報告している.そこで管腔の造影下における3D表示を試み,その有用性に関して検討した.
【対象と方法】
 健常ボランティア10名を対象とした.300 mlの麦茶にSonazoidを1滴(約0.05 ml)滴下し攪拌した懸濁液を調整し,全例に飲用させた.その約1分後から胃を観察し,3D画像を作成した.胃体上部より口側の観察は仰臥位または左側臥位,胃体中部より肛門側の観察は座位で行った.使用機種は東芝Aplioである.まずmechanical index 0.2 0.5の低音圧ハーモニックイメージングで観察した後,通常のB-modeで観察し,両者において3D画像を作成した.両者の3D画像について比較検討を行った.なお,本研究は院内倫理委員会の承認を得て行ったものである.
【結果】
全例でSonazoid懸濁液の内服が可能であり,これに伴う有害事象は経験しなかった.通常のB-mode画像から作成した3D画像に比較して,いずれの対象においても造影下3Dの方がよりアーティファクトの少ない明瞭な画像が得られたが,分解能はやや低下している印象を受けた.両者の方法に共通する画像不良の原因としては近接する横行結腸による音響窓の狭小化が挙げられ,通常B-modeによる3Dにおいて頻度の高い画像不良の原因は管腔内の小気泡や近接消化管からのサイドローブ,体表からの多重反射などであった.一方造影下3Dにおいてはいわゆるshadowingによる深部の不明瞭化を1例に認めた.他の造影下3Dの問題点として,造影剤が高価かつ保険適応外であることが挙げられた.また取り込んだデータから実際に3D画像を作成するにはある程度の慣れが必要であり,より簡便なソフトの開発が望まれた.
【考察】
管腔造影下の3D画像はそれを形成する基となる2D画像がよりアーティファクトの少ない高コントラストな画像であることから,通常B-modeを用いた3D画像より優れていた.胃疾患の診断は組織学的検索を含めた内視鏡検査によりなされており,本法の臨床的意義は今後の検討を必要とするが,経過観察を必要とする疾患における内視鏡やX線被爆といった侵襲の軽減,内視鏡による評価が困難な状況での評価,さらには同様な手法の膵胆道系への応用の可能性などが考えられた.
【結論】
管腔造影下での3D表示は,胃内腔面の評価法として有用である可能性が示唆された.