Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管3

(S400)

体外式超音波検査による胃癌の壁深達度診断

Assessment of the depth of gastric cancer invasion by transabdominal ultrasound sonography

広岡 保明1, 2, 永島 千春1, 森下 奨太1, 加藤 洋介1, 福田 千佐子1, 斎藤 博昭2, 建部 茂2, 辻谷 俊一2, 池口 正英2, 黒田 誠3

Yasuaki HIROOKA1, 2, Chiharu NAGASHIMA1, Shota MORISHITA1, Yosuke KATO1, Chisako FUKUDA1, Hiroaki SAITO2, Shigeru TATEBE2, Shunichi TSUJITANI2, Masahide IKEGUCHI2, Makoto KURODA3

1鳥取大学医学部・病態検査, 2鳥取大学医学部・第一外科, 3鳥取県立中央病院検査部

1Pathobiological Science and Technology,Tottroi University, 2First Dep. of Surgery,Tottori University, 3Dep. of Labolatory,Tottori Prefectural Hospital

キーワード :

【目的】
胃癌治療におけるESDの適応や,LADG等の術式選択において最も大きな要因となる壁深達度診断は,EUSや総合画像診断でなされているが,SM1とSM2の鑑別や,T2の術前診断などではしばしば困難なことを経験する.一方,超音波装置の進歩によって体外式超音波検査(TUS)による壁深達度診断の正診率は向上してきたが,まだまだ一般的には行われていないのが現状である.今回,われわれは体外式超音波検査による胃癌壁深達度診断がどこまでEUSに迫れるか,また術式の変更に寄与することが出来るかについて検討したので報告する.
【対象・方法】
2007.9〜2008.11に鳥取大学消化器外科を受診した胃癌患者のうち,術前にEUSあるいは総合画像診断(GIF,胃透視,CTなど),およびTUSによる壁深達度診断が施行され,切除標本より組織学的深達度が判明した45名(46病変)を対象とした.各組織学的深達度の対象病変数はM(n=15),SM1(n=2), SM2(n=13), MP(n=5),SS(n=5),SE(n=6) であった.TUSは脱気水約300ml飲水後坐位あるいは仰臥位にてコンベックス(2〜5MHz)あるいはリニア(6〜14MHz)型プローブにて走査した.EUSあるいは総合画像診断とTUSによる壁深達度を,それぞれ組織学的壁深達度と比較検討した.当科ではGIFや胃透視にてM〜SMの早期癌と判断された病変の深達度診断はEUSにて行い,MP以上の進行癌と判断された病変ではEUSを行わず総合画像診断で術前の深達度を判定している.
【結果・考察】
(1)体外式超音波検査では3病変が同定できなかった(同定率:93.6%).3病変の内訳は,体上部後壁,噴門部などのM病変2例,SM2病変1例で肥満傾向の患者であった.
(2)深達度T1をT1と正診できたのは,EUS:83.3%(25/30),TUS:80%(24/30)であった.また,当院におけるESDの適応であるM-SM1の正診率は,EUS:70.6%(12/17)に対しTUS:64.7%(11/17)であったが,SM2の正診率は,EUSの38.5%(5/13)に対しTUSが46.2%(6/13)と良好であった.体中部より肛側のT1病変の深達度診断に関して,TUSはEUSに引けを取らない診断能を有していると思われた.
エコー所見としては,M〜SM1のTUS像では第3層が菲薄化,不明瞭化していたが,SM2では第3層が断裂しているように見える症例が多かった.
(3)T2を正診できたのは,総合画像診断:60%, TUS:70%であった.また,MPをMPと正診できたのは総合画像診断(40%)に対しTUS(80%)が良好で,SSを正診できたのも総合画像診断(0%)に対しTUS(40%)が良好であった.今後は総合画像診断にTUSの結果を加味することで,LADGなどの術式がより的確に選択可能となるのではないかと思われた.
(4)T3を正診できたのは,総合画像診断もTUSも全例可能であった.
【結論】
早期胃癌の壁深達度診断において,TUSはEUSに匹敵する有用な診断法であることが確認された.また,進行癌においてもTUSによる壁深達度診断の有用性が示唆された.