Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:肝細胞癌3

(S398)

定位放射線治療前後にソナゾイド造影エコーにて血流動態を評価し得た肝細胞癌の3例

3 caces of the hepatocellular carcinoma which evaluated a bloodstream change in a Sonazid contrasting echo in Stereotactic radiotherapy front and back

今泉 延1, 竹田 欽一2, 葛谷 貞二2, 宇都宮 節夫2, 秦野 貴充1, 伊藤 将倫1, 小栗 健二1

Tadashi IMAIZUMI1, Kinichi TAKEDA2, Teiji KUZUYA2, Setuso UTSUNOMIYA2, Takamitsu HATANO1, Masatsugu ITOU1, Kenji OGURI1

1偕行会名古屋共立病院画像課, 2偕行会名古屋共立病消化器内科

1Department of Image Section,Nagoya Kyouritau Hospital, 2Department of Gastroentrology,Nagoya Kyouritau Hospital

キーワード :

【はじめに】
ソナゾイド造影エコー(CEUS)は,肝細胞癌(HCC)の診断から治療支援・治療効果判定などさまざまな用途での使用がなされ,その有用性が数多く報告されている.近年,HCCの治療法は3cm以下対してはラジオ波焼灼療法(RFA)が多く用いられ,腫瘍径や腫瘍数の関係によっては肝動脈的化学療法(TACE)などがある.今回,平成19年4月より『定位放射線治療(SRT)』が体幹部腫瘍へ保険適応となったため,RFA・TACEが困難または拒否患者に対しSRTを行い,その治療前後にてHCCの血流動態をCEUSにより詳細に観察できた3例を経験したので報告する.
【使用機器・方法】
GE Healthcare社製LOGIQ7で,造影モードはcoded phase inversion(CPI).造影剤はソナゾイドを用い,投与量は推奨量の1/2とした.撮影条件は患者別に治療前に撮影したCEUSの条件に統一した.方法は,全症例,SRT終了時から1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月後にB-Mode観察の後,引き続きCEUSを施行し,治療部位の血流観察を行った.
【症例1】
79歳 女性.C型慢性肝炎でフォロー中,S5胆嚢近傍に20mm大の境界明瞭・整の低エコー腫瘍を認め,CEUSを施行.血管相早期には腫瘍辺縁より流入するシグナルを認め,後期には腫瘍は均一な染影を認めた.クッパー相にてdefectを呈した.他の画像診断にてもHCCと診断.TACE+RFAを第一治療選択とするも,腹部大動脈瘤と体幹への穿刺拒否にてSRTを施行.5.5Gy×10Fr照射.
【症例2】
84歳 男性.C型肝硬変とHCC治療後にてフォロー中,S8横隔膜下に新規病変と思われる25mm大の被膜有する内部モザイク状の腫瘍を確認.CEUSでは,血管相早期・後期に流入シグナルを認め,均一染影.クッパー相にてdefectを呈した.他の画像診断にてもHCCと診断.RFAはS8横隔膜直下病変で右肺があり穿刺困難であると判断した.TACEは前回疼痛あり本人の希望にてSRT施行.5.5Gy×10Fr照射.
【症例3】
76歳 女性.C型慢性肝炎にてフォロー中,CTにてS5腹側表面・胆嚢床に接する18mm大の腫瘍を認め,CEUSにて血管相早期にバスケット状の流入シグナルを認め,後期には均一した染影を認めた.クッパー相にてdefectを呈した.他の画像診断にてHCCと診断.本人の強い希望にてSRTを施行.5.5Gy×10Fr照射.
【結果】
3症例すべて,1ヶ月後のB-Mode像は治療前とほぼ同様な形態であった.しかし,3ヶ月以降より腫瘍としての境界が不明瞭となりつつあり描出が困難な例もあった.CEUS血管相おいては,症例1の1ヶ月後では,腫瘍中心部に非染影部ができ,且つ,腫瘍辺縁のみ染影を認めた.他の2例は治療前と著明な変化は認めなかったが,3ヶ月後には症例1同様な非染影部も認めるようになった.また,3ヶ月以降では治療前と比し,染影が弱くなっているようにも思われた.クッパー相では経過観察中すべてにおいて,腫瘍部のみのdefectを認めるのみであった.腫瘍径は萎縮する例と変化ない例と様々であった.
【結語】
SRTは高い局所制御能があるとの報告もあり,RFA・TACEが困難または拒否患者に対し,低侵襲で治療効果のある治療法と思われた.また,SRT後の治療効果判定にCEUSは簡便且つ,低侵襲であり詳細な血流動態を評価できる唯一の検査法として位置ずけられると考えられた.