Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:肝細胞癌2

(S395)

当院肝細胞癌症例の造影超音波所見と予後

Could we predict prognosis of Hepatocellular carcinoma patients with CEUS?

山下 信行1, 堀 史子2, 野間 充3

Nobuyuki YAMASHITA1, Fumiko HORI2, Mitsuru NOMA3

1九州厚生年金病院内科, 2九州厚生年金病院中央検査室, 3九州厚生年金病院医療情報部

1Department of Internal medicine,Kyushu Kosei-Nenkin Hospital, 2Central Clinical Laboratory,Kyushu Kosei-Nenkin Hospital, 3Director of Medical Informatics,Kyushu Kosei-Nenkin Hospital

キーワード :

【はじめに】
今回われわれは,当院で行なわれている造影超音波検査が肝細胞癌症例の予後を予想することができるかどうかを調べた.
【対象と方法】
2002年1月より2005年12月までの4年間で,当院で初めて肝細胞癌と診断された症例は123例あり,単発で径2cm以下の症例は43例であった.そのうち造影超音波検査を施行した症例35例を今回の対象とした.平均年齢は69.6歳で,Child-Pugh分類はA:22例,B:13例であった.癌に対する治療は肝切除1例,局所療法30例,血管造影による治療3例,無治療1例であった.平均観察期間は41.5ヶ月で,初回診断時より3年内に転院等で経過観察不能となった症例は5例(14%),全観察期間では8例(23%)存在した.死亡例は10例(28.6%)で癌の進行により死亡した症例は3例,その他7例は肝不全や他病死などであった.
超音波診断装置は持田シーメンスSequoia 512で,ADIモード(MI値1.4〜1.9)にて観察を行なった.造影剤はレボビスト1バイアルを溶解し,約8ml (300mg/dl)として急速に静注した.今回の検討ではレボビスト静注後45秒後までを早期相,5分以後を後期相とし,腫瘍内部の染影態度を腫瘍周囲の肝実質と比較した.
【結果】
早期相の観察が可能であった症例は32例(91%)であった.周囲の肝実質とくらべ濃染が見られたのは23例,見られなかったのは9例で,それぞれの3年生存率は100%と87%で有意差は見られなかった.また後期相は31例(89%)で観察でき,染影欠損は19例で観察され,周囲実質と変わらなかったのは12例であった.それぞれの3年生存率は84%と89%で変わらなかった.
【考察】
当院では観察脱落例が多く長期の予後は不明であるが,3年間の経過観察では初回診断時の造影超音波検査の造影所見と予後には関連が見られなかった.その理由としては,対象となった症例群が少数であることや紹介例が多く既に癌が強く疑われていること,また,濃染・欠損といった簡便な分類では癌の悪性度を適切に表現できていない可能性などが考えられた.