Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:肝臓(その他)1

(S392)

超音波検診における脂肪肝改善の検討

Examination of the improvement of the fatty liver case by the supersonic wave examination

阿部 弘之1, 熊野 敦子1, 山﨑 賀代1, 栗原 紀子1, 豊島 恭子1, 後藤 伊織2, 小川 眞広2

Hiroyuki ABE1, Atsuko KUMANO1, Kayo YAMAZAKI1, Noriko KURIHARA1, Kyouko TOYOSHIMA1, Iori GOTO2, Masahiro OGAWA2

1財団法人日本予防医学協会健康管理事業部, 2駿河台日本大学病院内科

1Health care Division,Japan Preventive Medicine Foundation, Tokyo, Japan, 2Internal medicine,Surugadai Nihon University Hospital

キーワード :

(目的)脂肪肝は生活習慣病の憎悪因子であり,動脈硬化のリスクファクターである.しかし重症感がないことが本人の積極的な脂肪肝治療に対する行動変容が見られない要因であり,早期の脂肪肝では血液値が正常範囲内であることも多く,生活指導が徹底されにくい.脂肪肝はメタボリックシンドローム危険因子項目の憎悪要因の一つであり,メタボリックシンドロームの独立した危険因子であるとの考え方もある.これらを背景に今回我々は脂肪肝改善者の検診データーを縦断的に検証し,脂肪肝改善因子を検討したので報告する.
(対象)当協会において2005年4月〜2007月3月の間に腹部超音波検査を連続して受診し,検査時にHBs抗原,HCV抗体陽性者を除外した40408名(男性29485名,女性10923名
平均年齢46.8歳)を対象とした.(対象者は腹囲計測なし)
(方法)2005年度に脂肪肝を指摘され,2006年度に改善した者をFN群,いずれの年も指摘されない者をNN群とした.
①FN群において2005年,2006年とでBMI,HDL,TG,FPG,収縮血圧,拡張期血圧の値を男女別に比較検討した.
②FN群において2005年,2006年とでメタボリックシンドローム危険因子3項目の比較検討を行った.診断基準は内科8学会におけるメタボリックシンドロームの診断基準に準じた.
③FN群,NN群においてBMI,HDL,TG,FPG,収縮血圧,拡張期血圧を男女別に比較検討した.
④脂肪肝の発症因子(年齢,性別,BMI,中性脂肪)を検討した.
統計処理は危険率5%未満を有意とした.
(成績) 超音波診断による脂肪肝改善者は2042名(男1771名,女271名)であった.改善前のうち分けは非肥満脂肪肝症例57.1%,肥満脂肪肝症例42.9%であり非肥満脂肪肝症例の改善率が高かった.
①FN群を男女別に検討した結果,改善前と後で男性ではすべての項目において有意差を認めた.また女性においてはTG,収縮期血圧以外の項目において有意差を認めた.
②男性の危険因子保有項目数が0,1,2,3個の2005年の割合はそれぞれ31.5%,40.9%,22.2%,5.4%から2006年,37.7%,38.3%,19.8%,4.2%,女性は55.0%,29.9%,13.3%,1.8%から2006年58.7%,31.0%,9.6%,0.7%であった.
③FN群とNN群を比較検討した結果,すべての項目において男女とも有意差は認められなかった.
④脂肪肝の発症を目的変数とし,背景因子をBMI,年齢,性別,中性脂肪を説明変数とした多重ロジステック回帰分析ではBMIのみが有意な因子であった.
(結語)脂肪肝の改善はメタボリックシンドローム危険因子の改善に影響を及ぼすことから体重調節のための適切な生活指導が重要と考えられた.また体型因子のみでは指摘できない非肥満脂肪肝症例は改善率が高いことからメタボリックシンドローム予備群を抽出し,早期に改善するうえでも超音波検診の有用性が示唆された.