Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:肝臓(その他)1

(S391)

肝がん多発地区の超音波検診

Epidemiological investigetion in asahi,Hokkaido,Japan

樋口 竹広1, 美馬 聰昭2, 山田 政孝3, 関谷 千尋4

Takehiro HIGUCHI1, Satoaki MIMA2, Masataka YAMADA3, Chihiro SEKIYA4

1北海道医療生活共同組合札幌緑愛病院医療技術グループ, 2北海道医療生活共同組合札幌緑愛病院肝臓内科, 3士別市立病院消化器内科, 4天使大学大学院栄養管理学

1Department of Clinical Laboratory, Hokkaido Iryouseikyo, Sapporo Ryokuai Hospital, 2Department of Hepatology, Hokkaido Iryouseikyo, Sapporo Ryokuai Hospital, 3Department of Gastroenterology, Shibetsu City Hospital, 4Professor of dietetics, Tenshi College

キーワード :

【目的】
肝がん多発地区が全国に存在することは過去の報告から明らかである.北海道の肝がん多発地区で腹部超音波検査を主体とした住民検診を実施したので結果について報告する.
【方法】
対象地域は肝がん標準化死亡率が男女とも全国平均2倍以上の士別市朝日地区(旧朝日町).住民検診実施に先立ち士別市立病院,朝日総合支所の協力を得た.対象者は士別市朝日地区の20歳以上の住民1539名で士別朝日総合支所の協力により受診希望者を募集した.受診者には採血を行い,肝機能,AFP,B型・C型肝炎ウイルスマーカー検査を実施し,HBVキャリアにはHBV-DNA,HCVキャリアにはゲノタイプを追加した.腹部超音波検査にはGE社製logiq e 3台を使用した.期間は2008年8月4日,11日,21日,28日の延べ4日間.
【成績】
受診者は男性109名,女性191名の合計300名で受診率は19.4%,受診者の平均年齢は62.4歳であった.今回の受診者におけるHBVキャリアは4名1.3%,HCV抗体陽性者は28名9.3%であった.腹部超音波検査では肝がん3例(単発2例,多発は1例で内科的及び外科的に治療),腎がん1例(外科的に切除)が発見された.輸血歴別HCV抗体陽性率は輸血歴のある者では40名中9名22.5%,輸血歴のない者では260名中19名7.3%であった.輸血歴のない群のHCV抗体陽性率が全国平均に比較し高い為,その原因について検討した.この町は1998年6月頃まで林業の町として栄えた歴史があるため輸血歴のない260名に対する職業別HCV抗体陽性率についても検討を行った.HCV抗体陽性率は林業従事者では23名中6名26.1%,農業従事者では74名中4名5.4%,その他従事者では163名中9名5.5%であった.医療機関受診歴別HCV抗体陽性率ではA医院(営林署産業医)では168名中17名10.1%,B医院(町立病院から医業を継続)では73名中1名1.4%,その他では19名中1名5.3%であった.医療機関受診歴別HBs抗体陽性率はA医院32.7%,B医院18.1%,その他26.3%であった.
【結論】
この地域の肝がん多発の原因は1945年7月英国保健省が警告した「注射器肝炎」によるC型肝炎多発に起因することが推定された.また,今回の検診における肝がん発見率は1.0%で,我々が1981年11月から実施している北海道のB・C型肝炎キャリアなどの肝がんハイリスクグループを対象とした超音波検査による肝がん集団検診20年間の成績(実人数13,394名中177名の肝がん発見)による肝がん発見率1.3%と近似した1).肝がん多発地域の住民検診は潜在的B・C型肝炎キャリアの発見と肝がん発見に有用であることが示唆された.現在,過去の報告から肝がん多発地域が全国に存在していることは明らかで地域も特定可能である.したがって,行政はこのC型肝炎問題を隠蔽するのではなく患者救済のため2)3),肝がんの早期発見,早期治療を主眼に置き,肝がん多発地域の超音波による住民検診に取り組む必要がある.
文献
 1)川西輝明,美馬聰昭:ハイリスクグループに対する肝癌検診・日本臨床 59:786-790,2003
 2)猿島肝炎における長期追跡保存血清からみたHCV抗体の臨床的意義・肝臓 32:125-13 1991
 3)松下この寛:清水市における非A非B型肝炎流行例についての疫学的検討・厚生の指標 29:38-45 1982