Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:門脈・その他

(S388)

Parametric imageによる門脈血流異常の検討

Parametric image as a new application of contrast-enhanced US

石田 秀明1, 小松田 智也1, 渡部 多佳子1, 古川 佳代子1, 宮内 孝治2, 大山 葉子3, 住野 泰清4, 濱瀧 嘉伸5, 神山 直久5

Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Takako WATANABE1, Kayoko FURUKAWA1, Kouji MIYAUCHI2, Yoko OHYAMA3, Yasukiyo SUMINO4, Yoshinobu HAMATAKI5, Naohisa KAMIYAMA5

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田赤十字病院放射線科, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4東邦大学大森病院消化器科, 5東芝メディカルシステム株式会社超音波担当

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Kumiai General Hospital, 2Radiology, Akita Red Cross Hospital, 3Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Gastroenterology, Toho University School Ohmori Hospital, 5Ultrasound System Group, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

[はじめに]最近の,得られた造影超音波データの多彩な活用が報告されるようになってきている.Parametric image(以下,PI)もその一つである.PIは,従来あった,造影超音波time intensity curve(TIC)の発展形のひとつとも考えられる手法である.大まかには,TICが局所の造影濃度の経時的変化を示すものであり,その視野全体でのそれを簡便に一枚のイメージで表現したのがPIといえる.PIに関するこれまでの報告は,(共同演者の住野らの)慢性肝疾患に関するもの程度である.今回我々は,門脈血流異常例のPIを検討し若干の知見を得たので報告する.画像の表示法:今回用いた,(共同演者の神山らが開発した)方法では,視野内各点の造影ピーク値の時間的遅れを色調で表現したもので,早い(ピーク値への)到達時間の点は黄-オレンジ色で,遅い点は,青—緑色で表現している.観察持続時間や,観察の時間間隔は可変である.なお,いわゆる"手ぶれ防止"機能も加味されており,多少のぶれ(浅い呼吸性移動程度)には対応可能である.[対象と方法]下記疾患に対し,病変門脈とその近傍の肝実質が明瞭に見える断面の造影データを,外部のコンピューターに取り込み(上記の)PIのソフトを用い,肝動脈の濃染開始時を基軸としその後30秒間(5秒間隔),視野内の濃染ピーク時間の遅れをマッピングした(最も一般的なPIの設定).症例の内訳は;1)門脈ー静脈短絡(4例),2)門脈血栓(一過性名血栓形成)(2例),3)Cavernous transformation of the portal vein(CTPV)(4例),4)門脈瘤(1例),である.[使用診断装置]東芝社製:AplioXG, XV.[結果]1)門脈ー静脈短絡:全例において,門脈とわずかに遅れる短絡静脈表示されたが,周辺の実質に染まり開始時間のむらは認められなかった.2)門脈血栓:血栓部は常に無染部として表現されたが,その他は異常所見は軽微で,周辺の実質に染まり開始時間のむらはほとんど認められなかった.3)CTPV:器質化された血栓部は常に無染部として表現された.さらに,周辺の実質に染まり開始時間の大きなむらを認め,全体として,肝実質に,斑状に早期染影部と遅延染影部が分布するという結果が得られた.4)門脈瘤:周辺の実質に染まり開始時間のむらは認められなかったが,瘤内中心部が僅かに,染まりが遅かった.[まとめと考察]PIによる慢性肝疾患の検討では,肝硬変になると,正常〜慢性肝炎例に比して,肝実質染影時間は早く,いわゆる肝の"動脈化"を明瞭に可視化し,び慢性肝疾患の診断の一助になりえる,と報告されている.今回我々が検討した,門脈血流異常例に関しても,CTPV例では,肝実質が斑状に,早期染影部と遅延染影部が分布するという結果が得られ,今後多彩な肝疾患や血流異常例における肝実質の染まりの状態(単に"染まり"の有無ではなく,"遅延の程度"など)の把握に有用なツールになりえると期待される.今後,観察の時間間隔などの最適化など細部の検討が必要と思われた.今回の検討で二つの問題点が明らかとなった.一つは,今回用いたソフトが装置内臓のものではなく,いわゆる"外付け"であるため,操作が非常に煩雑であり,装置内臓の簡便なものにすることが求められる.他方は,PIには,いわゆる"手ぶれ防止"機能が加味されているが,通常の造影検査で得られた"普通の"造影データではやはり解析不能のものが多く,PI向きの撮像法が求められるなどの,検査時の負担も増加する.これらの問題点の改善が切に求められる.