Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:門脈・その他

(S387)

門脈ガス例の検討

Sonograms of Portal vein gas

渡部 多佳子1, 石田 秀明1, 小松田 智也1, 八木澤 仁1, 古川 佳代子1, 宮内 孝治2, 長沼 裕子3, 大山 葉子4, 伊集院 裕康5, 濱瀧 嘉伸6

Takako WATANABE1, Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Hitoshi YAGISAWA1, Kayoko FURUKAWA1, Kouji MIYAUCHI2, Hiroko NAGANUMA3, Yoko OHYAMA4, Hiroyasu IJUIN5, Yoshinobu HAMATAKI6

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田赤十字病院放射線部, 3市立横手病院内科, 4秋田組合総合病院臨床検査科, 5天陽会中央病院 内科, 6東芝メディカルシステムズ株式会社超音波担当

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Radiology, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 4Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 5Department of Internal Medicine, Tenyoukai Chyuuou Hospital, 6Department of Ultrasound SystemGroup, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

[はじめに]
近年の画像診断の精度の向上に伴い門脈ガス例の報告も増加してきた.我々は第80回本学術集会において超音波が診断に有用であった門脈ガスの2例を報告しFFT所見の有用性を強調した.その後,さらに4例の門脈ガス例を経験したのでこれらの症例を超音波所見を中心に報告する.さらに文献的考察も加え門脈ガスの超音波診断について再考する.
[使用診断装置]
東芝社製Aplio XG,XV.中心周波数3−4MHz.
[症例1]
60歳代女性:腹部膨満感,便秘で当院受診.腸閉塞の診断にて入院.原因検索のため超音波検査施行.腹水に加え大腸壁内に位置の変動しないガス像を認めた.詳細に観察(高周波プローブ使用)すると,これらは,壁内からのRing−down artifact及び第三層の線状ガス像に相当した.腸管気腫症と診断.FFT波形から微量の門脈ガスの存在も確認された.イレウスチューブ挿入後,大腸内視鏡にてS状結腸癌と診断された.CTで門脈ガス,腸管壁内のガスは描出できなかった.2日後の超音波検査にて腸管壁内のガス像は消失し,S状結腸にPseudo-kidney signを認めた.
[症例2]
50歳代男性:急性虫垂炎にて腹腔鏡下虫垂切除術施行.退院後から咳嗽あり近医受診.投薬治療あるも症状改善せず発熱,右下腹部痛も出現し当院紹介入院となった.手術創周辺の発赤や局所熱感は認めない.血液検査では白血球増多,CRP高値と炎症所見を呈した.超音波検査では上行結腸に沿うように膿瘍が認められ,腹腔膿瘍と診断した.また,門脈本幹から門脈右枝,肝実質に多数の微小点状エコーを認め,FFT波形で門脈ガスの存在も確認された.CTでも虫垂断端周囲に膿瘍形成が認められたが門脈内のガスは検出しえなかった.
[症例3]
30歳代男性:発熱,腹痛で当院受診.腹部:平坦,軟.筋性防御なし.正中から右下腹部圧痛あり.血液検査では白血球増多,CRP高値と炎症所見を呈した.超音波検査では腸管全体の軽度肥厚と少量の腹水を認めた.また,門脈本幹から門脈右枝,肝実質に多数の微小点状エコーを認め,FFT波形で門脈ガスの存在も確認され腸炎に伴う門脈ガスと診断した.
[症例4]
70歳代男性:アルコール多飲例糖尿病の精査加療目的にて当院紹介.血液検査では軽度の貧血と軽度の肝機能異常を認める.肝炎ウイルスマーカーは陰性,腹部超音波検査では典型的な肝硬変の所見に加え門脈と上腸管膜静脈に点状エコーを認めFFT所見から門脈ガスと診断した.
[まとめと考察]
門脈ガスは当初は腸管壊死の存在を示す所見と考えられ,この所見を認めた場合は緊急開腹術が必須とされていた.しかしながらこの考え方は時代と共に変化し,腸管壊死以外の原因でも生じるとされてきている.今回の我々の症例もこの傾向を示していた.文献的には約30例の報告があり1,腸疾患に合併するもの,2膵胆道系疾患に合併するもの,3その他の疾患に合併するものに大別可能である.このため1,2を除外できる場合は経過観察で十分と思われる.診断にはFFT波形の解析がもっとも鋭敏で門脈内に点状エコーを認めた場合はただちにそのFFT解析をすることで確定診断が可能と思われる.