Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管2

(S386)

糞石による腸管閉塞

Fecalith associated Ileus

大山 葉子1, 石田 秀明3, 吉田 千穂子1, 紺野 純子1, 工藤 奈緒子1, 星野 孝男2, 渡部 博之2, 小松田 智也3, 渡部 多佳子3, 長沼 裕子4

Yoko OHYAMA1, Hideaki ISHIDA3, Chioko YOSHIDA1, Jyunko KONNO1, Naoko KUDO1, Takao HOSHINO2, Hiroyuki WATANABE2, Tomoya KOMATSUDA3, Takako WATANABE3, Hiroko NAGANUMA4

1秋田組合総合病院臨床検査科, 2秋田組合総合病院消化器科, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4市立横手病院内科

1Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 2Gastroenterology, Akita Kumiai General Hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 4Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

[はじめに]比較的まれで,しかも超音波像の報告も少ない糞石による腸管閉塞の3例についてその超音波像を中心に報告する.[使用装置]東芝:AplioXV(症例1・2),AplioXG(症例3)[症例1]30歳代女性,骨形成不全症例.発熱と便秘を主訴に当院受診.生化学的には白血球9,400/μl,CRP29.89mg/dlと炎症所見を示した.理学所見は身長115cm体重30Kg,拡張腸管による腹部膨満が見られた.腹部X線でniveauを認め,超音波では拡張した腸管(主としてS状結腸)に8cm大の音響陰影を伴うstrong echoを認めた.周囲に微量の腹水と,それより口側の腸管は拡張し内部に多数のゆるやかな移動を示す点状高エコーの集合が見られた.Free air(−),肝胆膵に異常は認められなかった.以上の所見から糞石によるイレウスと考え精査加療目的で入院となった.同日のCTでもほぼ同様の所見であった.症状悪化し3日後の腹部X線でfree air認めた.白血球1,900/μlと低下,CTでも腹水増量,free air認めた事から緊急開腹術施行.骨形成不全症により後方から仙骨,前方から子宮により直腸が圧排されており,明らかな穿孔は認めないが,長期便秘によると思われる腸液漏出と腸管周囲に膿瘍形成が確認された.腸管内に糞石を認めた.組織学的には摘出した腸管に浮腫と軽度の線維化を認めるも悪性所見はなかった.[症例2]20歳代女性,長期の便秘症例(月に1度程度の排便のみ).増強した腹満感を主訴に当院受診.生化学的に異常なし.理学所見身長164cm体重54Kg,拡張腸管による腹部膨満が見られた.超音波では大腸全体の拡張とそれによる小腸の圧迫を認めた.周囲に微量の腹水も見られた.Free air(−)肝胆膵に異常は認められなかった.以上の所見から糞石によるイレウスと診断した.3.3Kgの糞塊(糞石等)を摘便.その後症状改善,直腸生検にてaganglionosisと診断された.[症例3]50歳女性,C型肝硬変と慢性腎不全例.約13年前から人工透析開始.4日間排便なく腹痛を主訴に来院.生化学的には白血球15,400/μl,CRP7.6mg/dlと炎症所見を示した.理学所見では特記すべき事項なし.超音波ではS状結腸部に音響陰影を伴う高エコーと,それより口側の腸管は拡張し内部に多数のゆるやかな移動を示す点状高エコーの集合を認めた.小腸壁も軽度肥厚し腸管周囲に微量の腹水を認めた.Free air(−).超音波所見から糞石によるサブイレウスと診断し,手術を考慮し同日入院.2日後症状増悪し,CTで多量の腹水とfree airを認め,糞石イレウスの腸管穿孔と診断し緊急開腹術施行.組織学的に悪性所見くアミロイドーシスは直接証明されなかった.
[まとめと考察]糞石に伴うイレウス例の3例をその超音波像を中心に報告した.糞石は腸管内にはまり込んだ音響陰影を伴うstrong echoとして表現され,特徴的な所見であった.この所見をしっかり把握する事で診断に苦慮する事は少ないと思われる.現疾患としては先天性疾患(Hirschsprung病など),憩室炎,腸管アミロイドーシス,長期透析による腸管機能の低下が挙げられている.症例3ではアミロイドーシスは証明されなかったが,長期透析例に伴う腸管機能の低下による糞石形成と思われた.文献的にはCTで診断された例が多いが,腹部症状例に対して最初になされる検査法は超音波であることを考えると,その超音波所見を把握しておく事は臨床的意味が大きいと思われた.