Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管2

(S385)

小児急性虫垂炎における糞石の超音波像とCT値

Ultrasonographic findings and Hounsfield Unit of fecalith in pediatric acute appendicitis

藤井 喜充1, 木野 稔1, 青木 良純1, 佐藤 正人2

Yoshimitsu FUJII1, Minoru KINO1, Yoshizumi AOKI1, Masato SATO2

1中野こども病院小児科, 2北野病院小児外科

1Pediatrics, Nakano Childrens Hospital, 2Pediatric Surgery, Kitano Hospital

キーワード :

(はじめに)小児急性虫垂炎の超音波検査で糞石が描出されず,CTおよび手術で確認される症例にしばしば遭遇する.当院の糞石の描出率と典型例2例を検討し,糞石の描出率が低い理由をCT値の観点から検討したので報告する.
(対象)平成17年4月1日から平成20年10月31日までに,当院の超音波検査で急性虫垂炎と診断され,CT検査および手術で糞石の有無が確認された43例(男児22例女児21例:52〜168月齢で中央値110月齢)
(方法)東芝Aplio50の5MHzコンベックスプローブと9MHzリネアプローブを用いた.糞石と判断する基準は,1)高エコー腫瘤 2)音響陰影 3)虫垂壁との内部構造の違いが明瞭 とした.検査当時の所見レポートで糞石の有無が明記されているものを採用し,記録写真の再検討により糞石があったと判断した症例は,陰性とした.CT検査は単純CTと動脈相造影CTを5mm間隔スライスで,超音波検査による虫垂予想位置より上3cmから恥骨上部まで撮影した.
(結果)34例が手術となった.超音波検査で糞石なしと判断し,CT検査および手術で糞石が確認された症例は10例存在したが,超音波検査で糞石ありと判断し,実際に確認された症例は8例(感度44%)にとどまった.超音波検査で糞石なしと判断し,実際に存在しなかった症例は25例(特異度100%)であった.
(症例1)11歳の女児.第2病日の超音波検査で,血流の増加した先端径12.3mmの虫垂と,体部に高エコーで音響陰影を有する糞石が描出された.糞石のCT値は108.5H.U.であった.手術所見は穿孔性虫垂炎で,体部に径5mmの糞石を有していた.
(症例2)10歳の男児.第3病日の超音波検査で虫垂体部が局所的に12.5mmに膨大した虫垂が描出されたが,糞石および音響陰影は確認されなかった.糞石のCT値は231.0H.U.であった.手術所見は蜂窩織性虫垂炎で,体部に径8mmの糞石を2個有していた.
(考察)感度が低い理由は,超音波検査では症例1に示したような,典型的な糞石のみ陽性と判断され,炎症が高度で虫垂層構造および周囲組織が変化した症例では,実際には糞石と認識するのが,困難であったためと考えられた.さらに症例2のように,判断基準の1)を呈さない症例が存在することも,理由の1つと考えられた.糞石の高エコーは石灰化と含気の影響を受けるが,症例1はCT値が低く石灰化が低い分「軟らかい糞石」であるため含気が多く,高エコー腫瘤および音響陰影として描出されたが,症例2はCT値が高い分「硬い糞石」となり含気が減り,超音波透過性が亢進したと考えられた.低エコーの糞石の場合は超音波検査では認識し難いので,虫垂径の不自然な変化や虫垂壁構造とは異なる領域が確認された場合は,腹部CTを併用することが有用であると結論した.