Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管2

(S384)

小児鼠径ヘルニアに対する術前超音波検査の有用性

Preoprative ultrasonographic evaluation of inguinal hernia in children

須貝 道博, 池永 照史郎, 遠藤 正章, 棟方 博文

Michihiro SUGAI, Shoujirou IKENAGA, Masaaki ENDO, Hirohumi MUNAKATA

弘前大学小児外科小児外科

Pediatric Surgery, Hirosaki University School of Medicine

キーワード :

目的:鼠径ヘルニアの客観的診断方法は未だ確立されておらず,片側ヘルニア術後の反対側発生に関してもいろいろ問題があり,多くの施設ではヘルニア発生時に手術を施行する方針をとっている.反対側発生の防止策として今回我々は超音波検査(以下US)により反対側の鞘状突起,ヌック管の開存の程度を検索し,有用性について検討したので報告する.
対象,方法:2007年1月より2009年1月までの約2年間に当科で経験した鼠径ヘルニア155例を対象とした.内訳は男児105例,女児50例であった.鼠径ヘルニア例に対し,両側に術前USを行いヘルニア門の大きさ,腹膜鞘状突起やヌック管の長さを測定した.使用機器は東芝SSA360Aで探触子は7.5MHzリニアを用い,内鼠径輪直上で鼠径管を描写し,腹膜鞘状突起の形状を評価した.
結果:USを施行した男児105例中,両側例は7例であった.右側ヘルニアは58例中49例(85%)に対側腹膜鞘状突起の開存を認めた.左側ヘルニア40例中32例(80%)に対側腹膜鞘状突起の開存を認めた.右側ヘルニア術後対側手術施行例は3例,左側ヘルニア対側手術施行例は4例であった.7例6例で腹膜鞘状突起の開存を認めていた.門の大きさは6mm以上であった.一方女児では両側例は5例みられた.USでは片側ヘルニア対側ヌック管開存例は26例(57%)で11例に対側腹腔鏡ヘルニア手術(LPEC)を行った.対側ヌック管開存例に対する手術適応は腹腔鏡での観察でヌック管の長さが10mm以上,ヘルニア門の大きさが5mm以上とした.USで片側ヘルニア対側ヌック管閉鎖例は19例で,2例のみ開存みられ,対側LPECを施行した.滑脱型は5例みられ,鼠径管内での卵巣の描写により容易に診断できた.
結論:男児では術前対側腹膜鞘状突起の開存の有無を観察することにより術後の対側発生をある程度予測できるのではないかと考えられた.女児では滑脱ヘルニアの診断や腹腔鏡手術時の対側手術の情報が得られることでUSの有用性が示唆された.熟達した技術を要するが,解剖学的異常を念頭において走査すれば鼠径部に膨隆のみられない鼠径ヘルニアの診断が可能で治療への補助として多くの情報を与えてくれる.