Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管1

(S384)

体外式超音波検査による大腸憩室炎の診断能

Sonographic detection of diverticulitis

蓮尾 英明1, 畠 二郎2, 眞部 紀明2, 山下 都3, 谷口 真由美3, 中武 恵子3, 竹之内 陽子3, 小島 健次3, 今村 祐志4

Hideaki HASUO1, Jiro HATA2, Noriaki MANABE2, Miyako YAMASHITA3, Mayumi TANIGUCHI3, Keiko NAKATAKE3, Yoko TAKENOUCHI3, Kenji KOJIMA3, Hiroshi IMAMURA4

1川崎医科大学付属病院総合診療科, 2川崎医科大学付属病院検査診断学, 3川崎医科大学付属病院中央検査部, 4川崎医科大学付属病院食道・胃腸内科

1Department of General Medicine, Kawasaki Medical School Hospital, 2Department of Clinical pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School Hospital, 3Department of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital, 4Department of Gastroenterology, Kawasaki Medical School Hospital

キーワード :

【背景および目的】
最近では,体外式超音波検査(以下,超音波と略す)の大腸憩室炎の診断における有用性を支持する報告が認められている.しかし,現時点では標準的検査法として認識されておらず,他の形態学的検査と組み合わされて施行されていることが多い.そこで,超音波による大腸憩室炎の診断能,他の形態学的検査との併用の必要性を検討した.
【対象】
2007年1月〜2008年11月に当施設に腹痛を訴えて来院し,超音波で大腸憩室炎と診断された59例(男性31例,女性28例,47.4±17.5歳).1.比較的短い範囲(基本的に上行,下行などの区分を超えない)の大腸壁肥厚,2.肥厚した壁に接し,突出する類円形の低エコー域,3.その周囲の脂肪織肥厚,のすべての所見を認める場合を大腸憩室炎と診断した.
【方法】
全例無処置で超音波を施行.対象のうち,33例では他の形態学的検査も行い(総合判定群),残りの26例では超音波診断以外の形態学的検査は施行しなかった(超音波単独群).全例において,その後,大腸憩室炎として抗菌薬にて治療された.これらについて超音波所見と共に他の形態学的検査との一致率,超音波単独群と総合判定群との臨床経過の差異,に関し検討した.機種は東芝社製SSA-700A(Aplio),深触子は3.75MHzコンベックスおよび7MHzリニアを用いた.
【結果】
超音波所見として,大腸壁の厚みは7.6±2.1mm,憩室(突出する類円形の低エコー域)の大きさは10.1±3.9mm,全例で憩室周囲脂肪織の肥厚を認めた.また,カラードプラを施行した23例中21例で憩室を包囲する血管の描出を認めた.超音波と他の形態学的検査との一致率として,腹部CT検査12例(重複2例含む)との一致率は75%(3例でCTでは急性虫垂炎と診断),注腸検査14例(重複4例含む)とは100%,下部消化管内視鏡検査13例とは100%であった.一致しなかったCT検査3例のうち,2例は注腸検査も含めて総合的に憩室炎と診断され,1例は虫垂切除の術中所見より憩室炎と診断された.両群の臨床経過の差異として,超音波単独群26例のうち,継続的な診察にて治療効果の判定が可能であった18例では全例で抗菌薬単独の治療にて改善したが,総合判定群33例のうち,30例は抗菌薬治療にて改善(うち1例は,虫垂切除後),1例は周囲膿瘍へのドレナージ併用にて改善,2例は抗菌薬治療への反応性が乏しく結腸部分切除が施行された.
【考察とまとめ】
超音波と他の形態学的検査との一致率は高く,超音波による大腸憩室炎の診断能は非常に高いと考えられる.また,超音波単独群における臨床経過が良好であったことより,超音波以外の検査を省略して治療しても,臨床的に大きな問題はないと考えられる.