Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管1

(S383)

75歳以上の高齢者における体外式超音波検査による進行大腸癌の検出率の検討

Evaluation of advanced colon cancer using abdominal ultrasonography in senior citizen

小嶋 和夫1, 藤井 陽一朗1, 小倉 利恵子1, 大木 了1, 内園 まり子1, 菅谷 洋子2, 南雲 功3, 永井 栄子3, 橋本 敬1, 玉野 正也1, 平石 秀幸1

Kazuo KOJIMA1, Yoichiro FUJII1, Rieko OGURA1, Ryo OKI1, Mariko UCHIZONO1, Yoko SUGAYA2, Isao NANKUMO3, Eiko NAGAI3, Takashi HASHIMOTO1, Masaya TAMANO1, Hideyuki HIRAISHI1

1獨協医科大学消化器内科, 2国立病院機構宇都宮病院消化器内科, 3国立病院機構宇都宮病院検査科

1Department of Gastroenterology, Dokkyo Medical University, 2Department of Gastroenterology, Utsunomiya National Hospital, 3Department of Examination, Utsunomiya National Hospital

キーワード :

【目的】
日本人の大腸癌罹患率は,今後さらに増加することが予測されている.大腸癌の診断に大腸内視鏡検査が有用であることは論を待たないが,同検査には出血や穿孔など重篤な合併症のリスクが伴う.また,特に75歳以上の後期高齢者においては,全身状態(Performance Status:PS)不良のために前処置の下剤を充分に内服できない例や,内視鏡検査自体が困難な例が少なからずみられる.今回我々は,後期高齢者を対象として,体外式超音波検査の進行大腸癌スクリーニングに対する有用性を検討したので報告する.
【対象と方法】
平成19年10月から平成20年10月までに当科関連病院において大腸内視鏡検査の前に体外式腹部超音波検査による大腸スクリーニングを施行した75歳以上の高齢者35例中,全結腸を内視鏡にて観察し得た29例である.対象の内訳は,男性16例,女性13例,平均年齢は80.2歳(75〜93歳)であった.超音波検査には東芝製Aplio SSA-700Aを使用した.消化器内科医6名と臨床検査技師2名が,大腸内視鏡検査に先行して体外式腹部超音波検査による進行大腸癌のスクリーニング検査を行った.超音波上,大腸に一致してpseudo kidney signを認めた場合,または拡張した腸管の閉塞部位に低エコー腫瘤像を認めた場合を進行大腸癌疑いとした.その後に超音波検査所見と大腸内視鏡所見とを比較検討した.
【結果と考察】
体外式腹部超音波検査にて進行大腸癌を疑われた症例は35例中5例あり,そのうち大腸内視鏡検査と診断結果が一致した大腸癌であった症例は5例中4例であった.偽陽性であった1例は超音波検査では上行結腸癌疑いであったが,内視鏡検査にて直腸癌と判明した.以上より,進行大腸癌に対する腹部超音波検査の敏感度は0.8,特異度は0.96,陽性反応適中度は0.8,陰性反応適中度は0.96であった.PSやBody mass indexが検査に与える影響についても検討したが,有意な影響は認めなかった.
【結語】
75歳以上の高齢者において体外式超音波検査による大腸スクリーニングは,進行大腸癌の検出に有用であり,高齢者の大腸内視鏡検査の適応を検討する際の一助になると考えられた.今後はさらに症例を集積するとともに検査精度の標準化を図る方法を検討する必要があると思われる.