Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管1

(S383)

過去10年間に当科で経験した小児消化管ポリープ20例の検討

Examination of 20 alimentary canal polyp children that we experienced in the past 10 years.

青松 友槻1, 余田 篤1, 井上 敬介1, 村野 実之2, 江頭 由太郎3, 玉井 浩1

Tomoki AOMATSU1, Atsushi YODEN1, Keisuke INOUE1, Mitsuyuki MURANO2, Yutarou EGASHIRA3, Hiroshi TAMAI1

1大阪医科大学小児科, 2大阪医科大学第2内科, 3大阪医科大学病理学教室

1Pediatrics, Osaka Medical College, 2Second department of Internal Medicine, Osaka Medical College, 3Pathology, Osaka Medical College

キーワード :

【背景】
小児の日常診療において血便に遭遇する機会は多い.消化管ポリープは原因となる代表的疾患だが,内視鏡を容易に施行できない小児では診断が難しい.重篤な合併症もあり,早期診断は重要である.
【対象・方法】
過去10年間に当科で経験した消化管ポリープ20例の臨床像や診断方法を後方視的に検討.
【結果】
1.臨床像
男13例,女7例,平均5.0±3.6歳(0.7〜14.0歳).ポリープを回収できなかった1例を除いた19例全例,組織検査で若年性ポリープ(JP)と診断.主訴は,鮮血便17例(85.0%),鉄欠乏性貧血(IDA)4例(21.1%),腹痛3例(5.3%).病悩期間は,1か月未満5例,1か月以上6か月未満9例,6か月以上6例.ポリープの自然脱落を4例,再発を1例で認めた.合併症は,腸重積3例(小腸小腸2例,大腸大腸1例),IDA(Hb<10.0g/dl)5例,絞扼性イレウス1例,癌化(腺癌)1例.
2.診断方法
 体外式超音波(US)14例,下部消化管内視鏡(CS)2例,注腸造影1例,直腸診1例,手術1例,ポリープの自然排出1例.総ポリープ24個中22個にUSを施行,描出できたポリープは15個(68.2%).絶食のみの前処置で行う通常USで描出できたのは11個(50.0%).このうち,初回で描出されたのは7個(33.3%),4個(18.2%)は2回目で描出.4個(19.0%)は通常USでは描出できず,注腸USで描出.
3.ポリープ所見
単発18例,複数発生2例(2個:1例,3個:1例).部位は,直腸6例(30.0%),S状結腸5例(25.0%),下行結腸5例(25.0%),横行結腸1例(5.0%),小腸3例(15.0%).ポリープ径の中央値は15mm,肉眼形態は,Ip13個,Isp7個,Is2個,不明2個.USでは,描出されたポリープ全てで,複数のsmall cystと豊富な血流シグナルを認めた.癌化例はUSで予測できず(診断は可).
【考察】
大腸例は17例全例が鮮血便を主訴とし,IDAの合併は2例のみであった.一方,小腸例は3例全例が鮮血便を認めずIDAを主訴としており,臨床像が大きく異なっていた.
USでみられるポリープ内のsmall cystは多い症例と少ない症例があり,組織像と比較すると,拡張腺管の多寡と一致していた.Small cystはJPの組織学的特徴を反映しており,診断的価値のある所見と考えられる.
20例中14例がUSでJPと診断でき,ポリープの描出率は68.2%であった.通常US1回の施行ではポリープの描出率は高くないが,反復や注腸等の工夫で描出率は向上していた.
USで描出できたポリープの径は中央値18mmであったのに対し,できなかったポリープは中央値6mmと有意に小さかった(p<0.01).10mm以上のポリープは,17個中15個(88.2%)が描出できたが,10mm未満のポリープは5個全て描出できなかった.部位別の描出率は,直腸33.3%,直腸以外の大腸100%,小腸66.7%であった.ポリープが小さい場合,直腸や小腸に発生した場合は描出が難しくなると考えられる.
【結語】
小児消化管ポリープの検索にUSは有用であるが,描出率を向上させるためには,反復して検査を行う,観察に時間をかける,注腸する等の工夫が必要である.IDAでUSを行う時は消化管ポリープを念頭に置くことも大切である.