山下 直人¹, 畠 二郎², 眞部 紀明², 蓮尾 英明¹, 石井 学³, 今村 祐志³, 鎌田 智有³, 楠 裕明¹, 山下 都⁴, 春間 賢³

Naohito YAMASHITA¹, Jirou HATA², Noriakki MANABE², Hideaki HASUO¹, Manabu ISHII³, Hiroshi IMAMURA³, Tomoari KAMADA³, Hiroaki KUSUNOKI¹, Miyako YAMASHITA⁴, HARUMA HARUMA³

¹川崎医科大学総合臨床医学, ²川崎医科大学検査診断学, ³川崎医科大学内科学食道胃腸科, ⁴川崎医科大学附属病院中央検査部

¹Department of General Medicine, Kawasaki Medical School, ²Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, ³Division of Gastroenterology Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School, ⁴Department Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital

キーワード :

【背景】
大腸癌の術前病期診断は，一般的に下部消化管内視鏡，X線造影，腹部CT，腹部超音波（以下US），超音波内視鏡等を施行し総合的に判断して決定されている．しかし，これらの検査を全て施行することは，侵襲性，経済性などの点で問題が残る．一方USは非侵襲的かつ安価な診断法であり，機器の改良に伴い消化管疾患の診断においてもその有用性が報告されるようになっている．我々は第79回，第81回日本超音波医学学術集会において，USによる大腸癌の術前病期診断の有用性について報告したが，今回は深達度診断に関しより詳細な検討を加え，第3報として報告する．
【対象と方法】
2004年4月から2008年12月までの間に当院で外科的切除を施行された大腸癌症例のうち，USによる病期診断が行われ，術中所見および手術病理所見により決定された病期診断との比較検討が可能であった155症例（男性87例，女性67例，平均年齢70歳）を対象とした．その内，先行する内視鏡検査で大腸癌が診断されていた症例（精査US）が108例，大腸癌の存在が不明な状態でUS施行した症例（スクリーニングUS）が47例であった．USは全例無処置で施行し，機種は東芝SSA-700A，プローブは3.75MHzコンベックス，または6-7MHzリニアを使用した．US所見の深達度と病理所見の深達度が一致した症例を正診群，US所見の深達度を浅読みした症例をunder群，US所見の深達度を深読みした症例をover群とした．各群における病変の大きさ，深達度，占拠区分および肥満指数（BMI）に関し検討した．また，検査目的別の正診率についても検討した．
【結果】
検討155症例の内，正診群は119例（76.8％），同様にunder群22例（14.2％），over群14例（9.0％）であった．深達度別の正診率は，SM浸潤9例中5例正診（正診率55.6％）で，同様にMP浸潤6/10例 （60％），SS-SE（A）浸潤98/116例（83.7％），SI（AI）浸潤10/20例中（50％）であった．病変の大きさは，正診群50.1±19.7（平均±標準偏差）mm，under群51.9±21.7mm，over群38.9±27.7mmで特に有意な差は認めなかった．病変の占拠区分検討では盲腸16例中10例正診（正診率62.5％）で，同様に上行結腸20/29例（69％），横行結腸20/23例（87％），下行結腸7/10例（70％），S状結腸26/29例（89.7％），直腸S状部12/17例（70.6％），直腸24/31例（77.4％）が正診で，盲腸の正診率が他の領域に比しやや不良であった．BMIは平均で正診群21.9±3.2（平均±標準偏差），under群22.4±4.0，over群22.8±2.7と各群で有意な差を認めなかった．検査目的別では精査USの正診率74.1％，スクリーニングUSで83％と差を認めなかった．
【結語】
大腸癌の深達度診断においてUSは有用であるが，一定の割合で深達度診断が困難な症例も存在し今後の課題であると考えられた．