Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:消化器(その他)

(S382)

後腹膜神経鞘腫の超音波所見

Ultrasonographic Findings of the retroperitoneal schwannoma

蓮尾 茂幸, 木村 裕美, 武山 茂, 中島 幸恵, 小林 幸子, 中村 智栄, 只野 薫, 橋本 碧, 内田 香織, 水口 安則

Shigeyuki HASUO, Hiromi KIMURA, Shigeru TAKEYAMA, Yukie NAKAJIMA, Sachiko KOBAYASHI, Tomoe NAKAMURA, Kaoru TADANO, Midori HASHIMOTO, Kaori UCHIDA, Yasunori MIZUGUCHI

国立がんセンター中央病院 臨床検査部

Clinical Laboratory, National Cancer Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
神経鞘腫は末梢神経のSchwann細胞由来の腫瘍である.頭頸部や四肢に好発し,後腹膜からの発生は比較的まれである.今回,我々は病理組織学的に確定診断された後腹膜神経鞘腫の超音波像について検討を行ったので文献的考察を含めて報告する.
【対象】
2000年〜2008年に当院にて腹部超音波検査を施行後,切除され,病理組織学的に後腹膜神経鞘腫と診断された6症例,6病変を対象とした.男性3例,女性3例.40歳〜66歳(平均55.0歳).発見契機は人間ドック(CTまたはUS)指摘3例,他疾患精査時に偶発的に発見されたもの2例.頻尿1例であった.全病変にカラードプラを,うち1病変はレボビスト造影超音波検査を施行した.
【結果】
[超音波所見] 病変の存在部位は,6病変中5病変は膵に接して存在していた.1病変は右副腎近傍に存在していた.腫瘍の大きさは26〜92mm(平均45.5mm).全病変が,類円形,境界明瞭,輪郭整を呈する腫瘍であった.内部エコーは,充実性腫瘍内に嚢胞状成分を含むもの4病変(1cm以下の小嚢胞が散在するもの2病変・2cm以上の嚢胞状成分を伴うもの2病変),嚢胞状成分を伴わないもの2病変.充実部分の実質エコー不均一5病変,均一1病変.後方エコー増強を認めたもの5病変.音響陰影を伴う高エコーを含むもの1病変.カラードプラにて内部血流信号を認めたもの3病変(うち造影超音波検査にて血流信号を認めたもの1病変).腫瘍の呼吸または体位変換にて移動性を認めなかった病変は6病変中5病変であった.鑑別診断として後腹膜腫瘍を挙げたものは5病変であった.[病理組織所見] いずれも類円形を呈し,繊維性被膜に覆われており,病理組織学的schwannomaと診断された.腫瘍内の嚢胞状成分は出血や出血壊死などの変性であった.
【考察】
後腹膜神経鞘腫は,後腹膜から発生する全腫瘍のうち約0.4〜6%と比較的まれな腫瘍で,自覚症状に乏しいとされている.自験例においても自覚症状を有したのは,頻尿の1例のみであった.近年,画像診断の進歩により,検診にて偶然発見される症例も増加してきている.今回の検討においても発見契機は,人間ドックまたは他疾患精査時に偶然発見された症例がほとんどであった.後腹膜神経鞘腫の典型像は,類円形,境界明瞭,内部不均一または嚢胞状を呈し,後方エコー増強を伴うとされている.自験例も同様であった.また,自験例では,6病変中5病変が膵と接していたため,膵由来の腫瘍との鑑別診断が問題となった.しかし,今回,5病変で後腹膜由来の腫瘍と診断することができた.これらは,呼吸または体位変換により,腫瘍が移動せず,後腹膜に固定されていることを確認可能であった.残りの1病変は上腸間膜動脈叢から発生した腫瘍であったため,腫瘍の移動性を認め,後腹膜腫瘍を鑑別診断に挙げることができなかった.
【まとめ】
後腹膜神経鞘腫の自験例6症例の超音波像について検討し文献的考察を含めて報告した.後腹膜神経鞘腫の超音波所見は,①膵近傍に発生する事が多い,②類円形,境界明瞭,輪郭整を示す,③嚢胞状成分は,伴うものや伴わないものがあり,その程度も様々である,④石灰化像を疑う高エコー成分を認めることは少ない,⑤通常呼吸運動や体位変換を行っても可動性を認めない,であった.これらの所見を踏まえて鑑別診断を進める必要がある.また,超音波検査では呼吸や体位変換を行うことにより,簡便に動的観察を行うことができるため,この超音波ならではの利点を十分に駆使することが重要と考える.