佐藤 美知子¹, 石田 秀明², 長沼 裕子¹, 小松田 智也², 吉田 泰夫², 大山 葉子³, 渡部 多佳子⁴, 小川 眞広⁵, 濱瀧 嘉伸⁶

Michiko SATO¹, Hideaki ISHIDA², Hiroko NAGANUMA¹, Tomoya KOMATSUDA², Yasuo YOSHIDA², Yoko OHYAMA³, Takako WATANABE⁴, Masahiro OGAWA⁵, Yoshinobu HAMATAKI⁶

¹市立横手病院消化器, ²秋田赤十字病院超音波センター, ³秋田組合総合病院臨床検査科, ⁴秋田赤十字病院生理検査科, ⁵駿河大日本大学病院消化器内科, ⁶東芝メディカルシステムズ㈱超音波

¹Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital,Akita,Japan, ²Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital,Akita,Japan, ³Department of Medical Laboratory, Akita kumiai General Hospital,Akita,Japan, ⁴Department of Medical Laboratory, Akita Red Cross Hospital,Akita,Japan, ⁵Department of Gastroenterology, Surugadai Nihon University Hospital,Tokyo,Japan, ⁶Department of Ultrasound System Group, Toshiba Medical Systems Corporation

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［はじめに］
我々は，第79，80，81回本学会学術集会において各種超音波アーチファクトの三次元超音波像を発表してきた．一方，最近三次元超音波下の穿刺機能を有する装置も市販されるようになってきた．しかし，本法における問題点に関してはまだ十分に検討されていない．そこで今回我々は，下記の要領で穿刺針がどのように歪んで表示されるか，寒天ファントムを用い検討し若干の知見を得たので報告する．
［検討方法］
穿刺針の歪みを検討する目的で，穿刺針を想定した管状構造物の前方に，周囲と音速の異なる球状構造物を設置した寒天グラファイトを作成した．その全体像を三次元構築し，穿刺面のスライス幅を変化させ多断面を作成．各断面における穿刺針の超音波像について検討した．
情報の取得においては従来の報告通り次の要領で行った．
プローブを手動操作にて，対象の上でプローブの厚み方向にほぼ一定速度で平行移動させ，各断面の全情報を一旦装置内蔵のコンピュータに取り込み，得られた多数の断面を重ね合わせる事によりvolume rendering法で二次元画像を再構築し三次元表示を行った．
設定条件は以下の通りである．1）球状構造物内の音速は1475m/sec，1596m/secと変化させる．2）球状構造物周囲の音速は1520m/secと一定にする．3）球状構造物の径20mm，管状構造物の径6mmとする．3）市販の三次元超音波下穿刺アタッチメントは，ほぼ60°の穿刺角に固定されているため，これを想定し60°の角度で管状構造物を維持させる．4）穿刺面のスライス幅を5mm，10mm，15mm，20mmと変化させる．
［使用機器］
超音波診断装置 : SIEMENS SONOLINE Elegra
三次元画像処理ソフト : SIEMENS 3-Scape
なお臨床画像は東芝社製AplioXGを用い作成した．
［結果］
（1）前方の球状構造物の音速が遅い場合
穿刺針の先端は，球状構造物の両端直下で欠損し，穿刺針自体は横ダルマ状に変形して表示された．穿刺面のスライス幅を厚くすると，穿刺針の欠損部は次第に減少して表示された．
（2）前方の球状構造物の音速が速い場合
穿刺針の先端の変形は極めて軽微で，若干細く表示される程度であった．なお，球状構造物の両端直下のみわずかに節状に広がっていた．このような変化は極めて軽微で穿刺面のスライス幅の厚みにほとんど影響されなかった．
［まとめと考察］
今回我々は三次元超音波下の穿刺を想定し，その歪みのパターンについて検討を加えた．音速が速い場合に比し音速が遅い場合，その歪みは著明で1）穿刺針が断裂して表示される2）穿刺針が実際よりも太く表示される，等の問題点がおき，特に1）が重要と思われた．これを防ぐ方法として穿刺面のスライス幅を厚くすることが考えられるが，この場合は穿刺針の位置に関して不正確となるため実際的ではない．このような三次元超音波像の歪みのパターンを正確に理解することは，今後リアルタイム三次元超音波下の穿刺がルーチン化されるに従い無視できない注意点と思われた．