Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:消化器(その他)

(S380)

軽度の脾腫をともなう脂肪肝とメタボリック症候群の関係についての検討

Relationship between metabolic syndrome and fatty liver with mild splenomegaly.

小宮 雅明1, 加藤 寿美子1, 石井 久美子1, 山崎 智子1, 北浦 幸一1, 小原 正巳1, 山村 和博1, 若杉 聡2, 平田 信人2, 江原 正明2

Masaaki KOMIYA1, Sumiko KATOU1, Kumiko ISHII1, Tomoko YAMAZAKI1, Kouichi KITAURA1, Masami KOHARA1, Kazuhiro YAMAMURA1, Satoshi WAKASUGI2, Nobuto HIRATA2, Masaaki EBARA2

1亀田総合病院超音波検査室, 2亀田総合病院消化器内科

1Department of Ultrasonography, Kameda Medical Center Hosipital, 2Department of Gastroenterology, Kameda Medical Center Hosipital

キーワード :

【はじめに】
日常臨床で,あきらかなウィルス性肝炎,ウィルス性肝硬変を認めない軽度の脾腫はしばしば経験される.われわれは,軽度の脾腫をきたした症例と脂肪肝の関係を検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は2007.9.1〜2008.8.31の期間に,当院の健康管理センターの人間ドッグで超音波検査が施行された6445例である.慢性肝炎,肝硬変を疑う症例は除外した.これらの症例で脾腫の有無,脂肪肝の有無を検討した.脂肪肝の有無ごとに脾腫の頻度を検討した.さらに,脂肪肝も脾腫もない1群,脾腫はあるが脂肪肝のない2群,脂肪肝があるが脾腫のない3群,脾腫があり,かつ脂肪肝も有する4群に分類し,各群間での腹囲,BMI,高血圧,高脂血症,糖尿病の頻度を検討した.脾腫は脾の下極外側と脾の上極内側間の距離(a)とそれに直交する脾の最大径(b)との積が35cm2以上とした.脂肪肝は肝腎コントラスト陽性かつ肝脾コントラスト陽性をもって診断し,肝腎コントラストのみ陽性の症例は今回の検討から除外した.また,深部減衰,限局性非脂肪化域の有無も今回は脂肪肝の診断基準に入れていない.
【結果】
6445例中,脂肪肝を有した症例は2022例(31.3%)であった.脾腫を有した症例は354例(5.49%)であった.脂肪肝のない4423例中脾腫を有する症例は176例(3.98%)であった.脂肪肝症例2022例中脾腫を有する症例は178例(8.80%)であった.脂肪肝症例には有意に脾腫の症例が多かった.脾腫・脂肪肝と腹囲の検討の結果,1群から4群になるにつれて有意に腹囲の異常値(男性85cm以上,女性90cm以上)の症例が多かった.脾腫・脂肪肝とBMIとの検討では,1群から4群になるにつれてBMIの高い症例が有意に多かった.脾腫・脂肪肝と高血圧の検討でも1群から4群になるにつれて高血圧群(140/90以上)が有意に多くなった.高コレステロール血症と脾腫・脂肪肝の検討でも1-4群になるにつれて高コレステロール群が有意に多くなった.糖尿病と脾腫・脂肪肝の関係では,糖尿病・耐糖能異常を有する症例は1群から4群になるにつれて有意に多かった.
【考察】
近年,脂肪肝と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)との鑑別が問題になっている.NASHには,内臓性肥満,高血圧,高脂血症,高血糖が多く合併し,メタボリック症候群とNASHとの関係も今後の重要な検討課題である.今回,われわれは脾腫・脂肪肝と,メタボリック症候群に関連する検査所見との関係を検討したが,脾腫・脂肪肝とそれぞれの所見との間に有意な関係を見出した.脾腫をともなう脂肪肝はメタボリック症候群,さらには,NASHと関係する可能性があると思われた.
【結語】
脾腫をともなう脂肪肝はメタボリック症候群,およびNASHの可能性を考慮し,精査すべきと思われる.