Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:消化器(その他)

(S379)

腹部領域におけるTissue Aberration Correctionの有用性

Application of Tissue Aberration Correction(PHILIPS)for B-mode sonogram in patients with abdominal diseases

山本 修一1, 丸山 紀史2, 石橋 啓如2, 高橋 正憲2, 桒野 美智子1, 山田 真子1, 真々田 賢司1, 横須賀 收2, 野村 文夫1

Shuichi YAMAMOTO1, Hitoshi MARUYAMA2, Hiroyuki ISHIBASHI2, Masanori TAKAHASHI2, Michiko KUWANO1, Mako YAMADA1, Kenji MAMADA1, Osamu YOKOSUKA2, Fumio NOMURA1

1千葉大学医学部附属病院検査部, 2千葉大学大学院腫瘍内科学

1Division of Laboratory Medicine, Chiba University Hospital, 2Department of Medicine and Clinical Oncology, Chiba University Graduate School of Medicine,Chiba,Japan

キーワード :

【目的】
Tissue Aberration Correction(TAC,PHILIPS)は,素子面での音速処理やfocusing調整によって脂肪組織の影響を受けた音速を補正し,とくに深部におけるB-modeでの分解能向上を目的とした新技術である.今回,腹部疾患臨床例において,本技術で得られた超音波画像を従来像と比較検討し,本法の有用性を明らかにした.
【対象と方法】
対象は,肝占拠病変48例(肝血管腫17,肝嚢胞24,肝内石灰化4,その他3),胆道疾患37例(胆嚢ポリープ10,胆嚢胆石22,胆泥3,胆嚢腺筋腫症2),膵疾患19例(膵嚢胞14,主膵管拡張5),腎疾患16例(腎嚢胞14,腎血管筋脂肪腫2),その他の疾患37例の計157例である.内訳は,男性69例,女性88例,年齢25〜89(61.9±13)才,体重35〜120(60.5±13.1)kg,BMI16.0〜39.2 (23.5±4.3),体表から肝表面までの組織厚(正中縦走査)は7.0〜45.8 (20.1±7.4)mmであった.超音波装置としてiu22(PHILIPS),C5-1トランスデューサを使用した.Tissue harmonic imaging mode(sono CT併用)で観察し,ゲインは至適レベル,焦点深度は原則として対象部下縁付近に設定した.同一術者が,対象部の可能な限りの同一断面についてTAC設定および非設定下で撮像し,静止画像を装置内ハードディスクへ保存した.その後,術者と異なる読影者が保存画像を観察し,TAC設定の有無における超音波像の優劣を比較検討した.
【結果】
(1)占拠病変の輪郭像に関する検討:嚢胞を除く肝・腎の占拠病変56例で検討した.病変部の輪郭は,30例(54%)でTAC設定時の方が非設定時より明瞭であると判定された.25例(44%)では,両者は同等で,1例(1.8%)でのみTAC設定時の方が輪郭像の描出に劣っていると判定された. (2)腔内アーチファクト(サイドローブ)に関する検討:胆嚢疾患ならびに嚢胞性病変の計91例において検討した.サイドローブは,69例(76%)でTAC設定時の方が非設定時より低減して観察された.残りの22例(24%)では,両者は同等と判定された.(3)細管腔の描出能に関する検討:主膵管拡張5例および他の管腔部(総胆管1例,血管4例)の計10症例において検討した.管腔は,7例(70%)においてTAC設定時の方が非設定時より明瞭に観察され,残りの3例(30%)では両者は同等と判定された.(4)映像の優劣と対象の背景因子(対象部の存在深度,体型)に関する検討:対象157例中106例においてTAC設定時の画像が非設定時より優れていた.また,50例は同等,1例(60才,女性,BMI19.7,肝血管腫,S4,10mm)でのみTAC設定時の画像が劣っていると判定された.TAC有効例とそれ以外の例において,BMIや皮下組織厚,対象部の存在深度に有意な差はみられなかった.
【結語】
新技術Tissue Aberration Correctionは,腹部領域でのB-mode超音波における分解能向上ならびにアーチファクト低減に有用であった.なお,本法有効例における,背景因子の特性については,今後の検討課題である.