Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:消化器(その他)

(S379)

携帯型超音波診断装置(シーメンス社:P-10)の使用経験

Pocket-sized US machine: our experience

石田 秀明1, 小松田 智也1, 渡部 多佳子1, 八木澤 仁1, 石井 透1, 大野 秀雄1, 大山 葉子2, 伊藤 恵子3, Chanwoong JOO4, 千葉 勝4

Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Takako WATANABE1, Hitoshi YAGISAWA1, Toru ISHII1, Hideo OHNO1, Yoko OHYAMA2, Keiko ITO3, Chanwoong JOO4, Masaru CHIBA4

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田組合総合病院臨床検査科, 3仙北組合総合病院臨床検査科, 4シーメンスメディカルシステムズ株式会社超音波担当

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 3Medical Laboratory, Senboku Kumiai General Hospital, 4Ultrasound SystemGroup, Shi-mense Medical Systems Corporation

キーワード :

最近のコンピュータ技術の進歩に伴い,装置の小型化も可能となってきている.我々は過去の本学術集会で,多機能な小型装置Fazone(フジフイルムメディカル)の音速補正機能について報告してきた.今回我々は,更に小型のシーメンス社のP-10を下記の要領で使用し若干の知見を得た.この経験を通して,超音波装置の将来像について検討したので報告する.
[装置(P-10)の概要]本体は720gでポケットサイズ.プローブはmedium focusのセクターのみで固定式(周波数:3−4MHz).B-モードのみでドプラ機能は無い.携帯での使用を基本としており,2時間の充電で1時間の検査が可能で約2万(静止)像を記録可能,また動画に関しても数秒の保存は可能.
[対象と方法]1)下記の疾患例に関して,ハイエンド装置(東芝社製:AplioXG(周波数:3−4MHz))で検査後,描出された病変をP-10でも観察し,両者を比較した.疾患の内訳:a)肝腫瘍10例15病変(HCC:4例,肝転移:6例),b)胆道結石17例(肝内結石:2例,胆嚢結石:12例,総胆管結石:3例),c)膵疾患9例(膵癌4例,慢性膵炎3例,膵のう胞2例),d)びまん性肝疾患10例(脂肪肝6例,肝硬変4例),e)胆管拡張6例(結石4例,膵癌2例,全例肝内5mm以上),f)液体貯留8例(腹水:6例,胸水:2例),g)イレウス4例.2)10名の若手(医師5名,学生5名,(全員,腹部超音波検査をわずかに経験している))に対し,正常腹部臓器の超音波像を対象に,P-10の印象を,使い心地と画質,を中心に尋ねた.
[結果]1)a)肝腫瘍は4/15(27%)のみが認識可能であった(全て2cm以上),b)胆道結石は13/17(76.5%)がSE+ASとして表現可能であった.しかし,ASが不鮮明であり,ASを出すにも,走査に若干の工夫が必要であった.c)膵疾患に関しては,膵癌(全て2cm以上)4/4,膵のう胞2/2,と全例描出可能であった.慢性膵炎の膵管拡張も全例描出可能であった.d)びまん性肝疾患では,肝腎コントラスト(+)から脂肪肝の判定は6例全例で可能であったが,肝硬変4例では,腹水(-)の3例では,肝表面の凹凸も実質パターンも判定困難で診断にいたらなかった.e)胆管拡張は6例全例で認識可能であった.f)液体貯留は8例,イレウスは4例全例で容易に描出しえた.2)a)形状と携帯性について:10名全員が満足したが,モニターが小さすぎる意見も全員から出された.B)画質について:全員が不満で,ほとんど読映出来なかった.またセクター画面が分かりにくい,と言う意見が8名からあった.
[まとめと考察]超音波診断装置の今後の方向として,巨視的には,1)高性能+多機能化,と,2)小型化,の2点が挙げられる.今回検討したP-10は,ポケットサイズで,携帯性に関しては,もうすでに満足すべき域に達していると思われる.しかし,画質的にはまだ改良すべき点があり,現時点では,実質パターンの判定はもちろんではあるが,小腫瘍の広い上げにも不適当である.将来的にはこの点の改良と,ドプラ機能の搭載が望まれる.一方,腹水などの拾い上げやイレウスの診断能が高く,結石の拾い上げ能も高いことから,救急の現場では現時点でも活用可能と思われる.しかし,装置の扱いにはある程度の走査技術が必要で,この点からも,(現在若手医師に対する教育がおざなりになっている)超音波教育を徹底させることで,はじめて,このような便利なツールを救急の場で有効に活用できると思われる.