Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:肝細胞癌1

(S376)

肝細胞癌の分化度診断におけるソナゾイド造影超音波の有用性

Evaluation of tumor differentiation in hepatocellular carcinoma by contrast-enhanced ultrasound with Sonazoid

高橋 正憲

Masanori TAKAHASHI

千葉大学医学部附属病院消化器内科

Department of medicine and clinical oncology, Chiba University Hospital

キーワード :

【目的】
肝細胞癌における分化度の診断は,治療方針の選択や予後の推定に極めて重要である.今回,肝細胞癌におけるソナゾイド造影超音波所見を組織所見との関連から検討し,肝細胞癌の分化度診断における本法の有用性を明らかにした.
【方法】
30mm以下の肝細胞癌56例(慢性肝炎6,肝硬変50)65病巣(20.6±4.9mm)を対象とした.全例,病理学的に診断され(中低分化44,高分化21),8病巣はB-mode超音波もしくは経静脈性造影CTにて結節内結節像を示していた.ソナゾイド0.0075ml/kgを急速静注し,Pulse subtraction harmonic imaging(APLIO,東芝,PVT375BT,MI0.2-0.3)にて,造影注入後から1分まで,5分,10分,15分の時相を観察した.腫瘍部の造影所見については輝度解析による定量的な検討を行った.すなわち,まず複数の関心領域を用いて非腫瘍部肝実質における造影分布の不均一度を検討した.次に,腫瘍部の時間輝度曲線を基に最大造影の時間を求め,その時相における超音波像における腫瘍部と非腫瘍部の輝度差を算出した.その値と非腫瘍部肝実質における輝度分布値を比較し,前者が大きい場合を強造影,同等を等造影,小さい場合を弱造影として,腫瘍部造影度を分類した.
【成績】
(1)造影所見と組織所見の対比(結節内結節像を示さない57病巣における検討)—A.造影所見の経時的変化:最大造影時(31.4±7.5秒,全例1分以内)において,輝度解析からみた腫瘍部は,強造影49例,等造影5例,弱造影3例であった.これらの所見は,全例で肉眼判定と一致していた.強造影例は1分相で6例が弱造影となり,5分相では計44例,10分相では計46例(93.9%)が弱造影を示した.2例は15分相で弱造影,他の1例は同相で等造影であった.一方,最大造影時に等造影であった5例では2例が5分相で弱造影を示し,他の3例および最大造影時に弱造影を示した3例は1分以降等造影であった.B.造影所見と分化度との関連:すべての低中分化肝癌42例と高分化肝癌12/15例(80.0%)は,最大造影時に強〜等造影を示した.この54例中,1分相で弱造影へ変化した6例は全て低中分化型であった.一方5分相では低中分化型の40/42(95.2%)例が弱造影を呈したが,高分化型の6/12例(50%)が弱造影で,本時相における弱造影所見は低中分化例に有意に高率であった(p<0.0001).また最大造影時に弱造影で1分以降に等造影へと変化した3例は全例高分化型であった.このように最大造影時の弱造影所見は高分化肝癌を強く示唆するものと考えられた.また強〜等造影例の最大造影後は弱造影へと変化したが,その時相は分化の進行とともに早期へシフトする傾向を示した.
(2)脱分化と時相別造影所見の関連(結節内結節を示す8病巣における検討)—最大造影時の内側結節(脱分化部)は,全例で強造影を示した.外側結節は,周囲肝との比較から2例が強造影,1例が等造影,5例が弱造影であったが,全例で内側結節より弱い造影度であった.一方,15分相の内側結節は6例が弱造影,2例が等造影であったが,外側結節は6例が等造影で,最大造影時に強造影を示した2例は弱造影であった.以上より肝細胞癌の脱分化過程では,後期相所見すなわち気泡蓄積性の低下よりも早期相所見すなわち動脈性腫瘍血流の獲得に伴った変化が先行するものと推測された.
【結語】
ソナゾイド造影超音波は肝細胞癌の分化度診断に有用である.