Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・治療1

(S374)

肝癌に対するFEP-BY02によるHIFU治療の経験

High-intensity focused ultrasound therapy by FEP-BY02 for liver cancer

佐野 隆友, 今井 康晴, 村嶋 英学, 宮田 祐樹, 市村 茂輝, 平良 淳一, 目時 亮, 古市 好宏, 山田 昌彦, 森安 史典

Takatomo SANO, Yasuharu IMAI, Eigaku MURASHIMA, Yuki MIYATA, Shigeki ICHIMURA, Zyunichi TAIRA, Ryou METOKI, Yoshihiro FURUICHI, Masahiko YAMADA, Fuminori MORIYASU

東京医科大学病院消化器内科

Gastrointestinal medicine, Tokyo Medical University

キーワード :

【目的】
肝癌に対する治療として,外科手術,ラジオ波熱凝固療法(RFA),エタノール注入療法(PEIT),肝動脈塞栓療法(TAE)などが行われてきた.それらの治療法により肝癌患者の生命予後は著しく改善されたが,腫瘍の存在部位や残肝機能などの条件により治療適応外となる症例も見受けられる.高密度焦点式集束超音波(以下HIFU)は強力な超音波を1点に集束させ,非侵襲的に身体内部の目的部位の温度を上昇させる事が知られている.しかし消化器領域では臓器の呼吸性移動,肋骨や胸骨の存在,消化管内のガス,治療時における皮膚熱傷等により,現在もその治療法の改善及び工夫が求められている.今回我々はChina Medical Technologies社製FEP-BY02を用い,2例の肝癌症例に対しHIFU治療を行ったので報告する.
【方法】
FEP-BY02は上下2層のトランスデューサーを有し,直径37cm,251個の超音波発信子を有する.超音波の集束角度は80度と広角なため,皮膚を通過する際に危惧される熱傷発生のリスクが軽減され,治療中の痛みも少ない.治療部位はトランスデューサー中央に設置されたB-mode超音波診断プローブにより観察,決定されるが治療実施中もリアルタイムに治療部位の観察が可能である.又観察用のプローブは180度回転可能であり,病変の矢状断,冠状断での観察も可能である.集束超音波の出力は病変の存在部位,腫瘍内の血流量などにより11W〜2000Wまでコントロール可能で,集束領域は3×3×10mm,焦点距離は25.5cm.トランスデューサーを移動,もしくは患者の体を移動することで治療領域を移動させていく.集束超音波の発射方法は,皮膚熱傷や過度の焼灼を避けるため間欠的な発射が推奨され,その発射時間,休止時間,発射回数も全て症例により自由に設定することが可能である.そして段階的に目的部位の温度を上昇させ,腫瘍壊死を目的とする.
【成績】
症例1:75歳,男性.HCV陽性肝細胞癌に対してRFAによる治療後経過観察中,造影CTで多発性に多血性再発肝細胞癌を認めた.肝左葉外側区に認める2.3cm大の再発病変は,超音波上,心窩部より容易に観察可能で,患者の同意のもとHIFU治療を先行,計5回に分け治療を行った.1回の治療時間は1時間30分程度.出力は500w〜1100wの間で調節し,患者の吸気時に合わせHIFUを照射.一回の照射回数は3〜5回,照射時間は500msec〜1000msecとした.照射の際,肋骨を保護するため薄い発泡スチロールを用いマスキングした.5回の治療終了後,造影超音波で,HIFU照射域に血流欠損が描出され,治療効果を認めた.症例2:81歳,女性.HCV陽性肝細胞癌に対してRFA,TAEにより治療を繰り返されていた.造影CTで多発性に多血性再発肝細胞癌を認めた.TAE,RFAといった観血的治療を望まれなかったため,患者の同意のもとS3の1.8cm再発病変に対してのみHIFU治療を行った.1例目とほぼ同じ方法で治療を行ったが,本例は照射可能範囲が狭く,病変近傍に太い血管を認め,皮下脂肪も厚かったため,出力は最大1500wとなった.しかし治療終了後の造影CTおよび造影超音波では明らかな血流欠損は認めなかった.治療を行った2例共に全身麻酔,鎮痛薬の投与を必要とせず,1例で照射時の軽度疼痛を認めたが,重篤な合併症は認めなかった.
【結語】
FEP-BY02によるHIFU治療は低侵襲で安全性が高く,今後,肝癌治療における有用性が期待される.