杉本 勝俊¹, 白石 順二², 斉藤 和博³, 市村 茂輝¹, 目時 亮¹, 山田 昌彦¹, 今井 康晴¹, 土井 邦雄², 森安 史典¹

Katsutoshi SUGIMOTO¹, Junji SHIRAISHI², Kazuhiro SAITO³, Shigeki ICHIMURA¹, Ryo METOKI¹, Masahiko YAMADA¹, Yasuharu IMAI¹, Kunio DOI², Fuminori MORIYASU¹

¹東京医科大学消化器内科, ²シカゴ大学放射線科, ³東京医科大学放射線科

¹Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University, ²Radiology, The University of Chicago, ³Radiology, Tokyo Medical University

キーワード :

【背景・目的】
超音波検査（US）は，各オペレーターが診断した主観的な所見が最終的な診断に用いられているため，CTやMRIと比べてオペレーター依存性の検査であると考えられている．これを改善するためには，標準化された手法で撮像されたUS画像データを，off-siteで放射線科医が読影し，最終的な診断を行う，といった診断体系の構築が重要だと考えられる．本研究では，転移性肝癌の検出に関し，B-mode US単独およびB-mode US＋造影US後期相 （combined US） の診断能の比較を目的として，7名の診断医による，動画を用いたoff-siteでの観察者実験を行ったので報告する．
【方法】
対象は転移性肝癌を有する27症例57結節および健常例6症例である．転移性肝癌の診断は造影CTによる2名の放射線科医の診断の合意で行った．最終診断を知らされていない1名の放射線科医が全てのUS検査を行った．最初B-modeにて全肝をルーチンの手順でスキャンを行い，その後，超音波造影剤（ソナゾイド）の静注10分後から，同様な手順で全肝のスキャンを行った．観察者実験を行うために，画面左にB-mode，右に造影の動画像を順次表示し，各動画像上で任意の位置にマークと転移性肝癌の存在の確信度を記録することが可能な専用のインターフェースを開発した（図1）．両セットの読影結果に対して，jackknife free-response receiver operating characteristic （JAFROC） 解析を行い，さらに，感度，およびfalse positives per case （FPC） を算出し評価した．
【結果】
全ての読影医においてcombined US （mean 72.2％） の感度はB-mode US単独 （mean 41.6％） の場合と比べ明らかな改善を認め，平均のFPCは，1.1個から0.5個に著名に減少した．さらにJackknife法による解析では，combined US （0.76）とB-mode US単独の平均FOM値の間に統計学的有意差を認めた（0.44, P＜ .00001）．
【結論】
転移性肝癌検出において，combined USではB-mode US単独と比べ，明らかな診断能の改善が認められた．さらに，今回の観察者実験よりUS画像をoff-siteで診断しうる可能性が示唆された．