石田 秀明¹, 小松田 智也¹, 渡部 多佳子¹, 古川 佳代子¹, 大山 葉子², 長沼 裕子³, 小川 眞広⁴, 濱瀧 嘉伸⁵, 神山 直久⁵

Hideaki ISHIDA¹, Tomoya KOMATSUDA¹, Takako WATANABE¹, Kayoko FURUKAWA¹, Yoko OHYAMA², Hiroko NAGANUMA³, Masahiro OGAWA⁴, Yoshinobu HAMATAKI⁵, Naohisa KAMIYAMA⁵

¹秋田赤十字病院超音波センター, ²秋田組合総合病院臨床検査科, ³市立横手病院内科, ⁴駿河台日本大学病院　消化器内科, ⁵東芝メディカルシステムズ株式会社超音波担当

¹Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, ²Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospita, ³Department of Internal Medicine，Yokote Municipal Hospital, ⁴Department of Gastroenterology, Nihon University School of Medicine, ⁵Department of Ultrasound SystemGroup, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

［はじめに］低音圧（0.2-0.3）用の造影剤（Sonazoid）が市販されてから約2年．その安定した所見から，造影超音波検査は，いまや腹部超音波検査の大きな柱になりつつある．それと同時に，造影超音波検査で見られるアーチファクトの認識も不可欠となってきているが，その報告は散見される程度である．Levovist時代から知られていた，1）造影剤破壊による染まりのムラ（断面を長時間観察すると，その断面内の造影剤が（かなり）破壊され“低染域”様に表現される）と，我々が前回発表した,2） Contrast raindrops sign（硬変肝の表面で超音波が屈折し，超音波の収束と拡散が生じ，音圧が不均一になるために，肝全体に，無数の縦縞が出現する現象），以外のアーチファクトについて検討したので報告する．
［対象と方法］我々が過去18ヶ月に施行した，Sonazoidを用いた造影超音波1500件を対象に，そのとき見られたアーチファクトで，上記1）2）と異なるものに関し，その画像上の特徴を検討した．
［超音波診断装置］東芝社製：Aplio XV, XG（中心周波数：3−4MHz）．日立社製：EUB-8500 （中心周波数：3−4MHz）． 造影方法は，通常の肝の造影に準じた．
［結果］a）サイドローブアーチファクト（顕著なものは0.2％）:肝表面や腸管前面に多数の弧状エコーが出現し，全体として氷上のブリザード様所見を呈した．b）のう胞内の“くも状エコー”（顕著なものは1.5％）:造影前無エコーであったのう胞内に，造影後“くも状”の淡いエコーが出現した．視野深度を変えることでその状態も変化した．c）肝辺縁部の濃染（顕著なものは0.3％）:大量の腹水（＋）の場合のみ出現した．造影後肝が縁取るように濃染し，場合により，腫瘍に類似した所見を呈した．特に肝変形が高度な例ではこの現象が強く出現した．d）深部の造影ムラ（顕著なものは0.5％）:肝深部に輪郭不鮮明な染まりや抜けが出現したが，所見の出現状態（時相や深度）が不安定であった．
［まとめと考察］超音波診断をする際アーチファクトに関する知識は不可欠である．Bモードやカラードプラ同様，造影超音波にみられるアーチファクトも十分に検討される時期になっている．上記の多くは，造影剤が入ることで，超音波の反射や散乱の状態が変わるためと思われるが，実際には他の要素（遅れてきた信号の表示，など）も多少関与してくる，と思われる．造影超音波診断上思わない誤診を避けるためにも，動画を通した出現パターンの理解が不可欠である．