石橋 啓如, 丸山 紀史, 高橋 正憲, 横須賀 收

Hiroyuki ISHIBASHI, Hitoshi MARUYAMA, Masanori TAKAHASHI, Osamu YOKOSUKA

千葉大学大学院医学研究院腫瘍内科

Department of Medicine and Clinical Oncology, Chiba University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
レボビストが2000年に発売されて以来，造影超音波は腹部領域における簡便な精密検査法として普及してきた．微小気泡を主成分とした超音波造影剤は安全性に優れ，重篤な副作用は極めて少ないが，レボビスト投与後に肝実質に不均一な異常高エコー像を認めた例が報告されている．今回我々は，ソナゾイドの投与後に，肝実質において同様の異常高エコー像の出現を認めた症例を経験したので報告する．
【対象と方法】
対象は，当院にて肝腫瘍精査目的あるいは慢性肝疾患における肝実質造影度の評価目的（倫理委員会承認済）でソナゾイド造影超音波が施行された768例（2007年1月〜2008年12月，男448，女320，67±9.7才）中の4例（男2，女2，62±7.4才，正常1例，慢性肝炎2例，S6径30mm肝細胞癌合併肝硬変1例）である．超音波装置はAPLIO（東芝，3.75MHzプローブ）を使用し，ソナゾイド（0.0075ml/kg）静注後，Harmonic Imaging，MI0.2-0.3にて観察した．
【結果と考察】
（1）造影超音波所見：造影後から5分後までの観察では4例全例において肝実質に異常所見は認められなかった．その後4例中3例では10分の時相，他の1例では15分の時相で，肝実質に1-3mm程度の不整形な異常高エコーが不規則に分布して観察された．対象例では，検査中に気泡崩壊を目的とした一時的な高音圧送信が施行されたが，この異常高エコー所見は，高音圧送信後に顕著となる傾向がみられた．10分の時点でこのような異常所見を認めた3例では，15分の時点で高エコーの径は2-5mm程度に増大し，輝度も上昇していた．また，その分布も焦点深度付近から肝全域へ広がり，その後の造影所見の観察は困難であった．このような肝実質の異常高エコー所見はB-mode上でも確認されたが，脾臓には同様の所見は指摘されなかった．（2）検査後の経過と薬瓶の検討：翌日のB-modeによる観察時には異常高エコー所見は消失し，血液所見や全身状態に特記すべき変化はみられなかった．異常高エコーを認めた4例では，全例で異なったソナゾイドバイアルが使用されていた．その中の1バイアル中の溶解液の一部が対象例以外の症例にも投与されていたが，その際には肝実質に異常高エコー像はみられなかった．また，対象4例中の1例では，経皮的な肝細胞癌治療後の効果判定目的のため後日改めて別のバイアルを用いた造影超音波が施行されたが，前回にみられた異常エコー所見は観察されなかった．（3）考察：今回経験した肝実質における異常高エコー像はレボビスト使用時にも報告されており，通常よりも大径の気泡が類同などへtrapすることがその原因として想定されていた．当院でのレボビスト投与例における発生頻度は0.5％で，今回のソナゾイドの場合（0.5％）と同等であった．今回の経験例での検討からも，造影剤投与後に認めた肝内異常高エコー発生の原因は明らかではないが，製剤バイアルや個体に特異的な現象ではないことが示唆された．
【結論】
ソナゾイド造影超音波においては，低頻度ではあるが肝実質に異常高エコーの出現をみることがある．本所見を認めた場合，その後の肝造影所見の読影が困難になることから，検査を中止し翌日以降に再検査を予定すべきと考えられた．