Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:肝造影2

(S365)

vascular recognition imaging (VRI)の使用経験

vascular recognition imaging (VRI): our experience

石田 秀明1, 小松田 智也1, 渡部 多佳子1, 古川 佳代子1, 八木澤 仁1, 石井 透1, 大野 秀雄1, 宮内 孝治2, 大山 葉子3, 濱瀧 嘉伸4

Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Takako WATANABE1, Kayoko FURUKAWA1, Hitoshi YAGISAWA1, Toru ISHII1, Hideo OHNO1, Kouji MIYAUCHI2, Yoko OHYAMA3, Yoshinobu HAMATAKI4

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田赤十字病院放射線科, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4東芝メディカルシステムズ株式会社超音波担当

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Radiology, Akita Red Cross Hospital, 3Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Ultrasound SystemGroup, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

最近のコンピュータ技術の進歩に伴い,造影超音波法に関しても,その応用は極めて多彩なものになりつつある.今回検討したvascular recognition imaging (以下,VRI)もその一つで,これは造影剤からのハーモニック成分のドプラシフトを利用したもので,造影剤の流れの方向性が分かる利点があるが,未だ発展途上の手法である.今回,我々は,VRIに関し,下記の要領で検討し若干の知見を得たので報告する.
使用診断装置:東芝社製AplioXG(中心周波数:3−4MHz).
表示法:通常の基本波のカラードプラ法のものに準じる.音源に向かってくる(造影剤を含んだ)流れは赤色系,音源から遠ざかる流れは青色系,動きのない箇所は緑色系,造影剤を含まない箇所は無色,で表示され,流れの早さは色の輝度で表示される.
対象と方法:1)次の疾患に関し,通常の造影検査(以下通常モード)中,各時相で数秒間VRIモードに切り替え,その直前の通常モード所見と対比した.なお,MI値は,通常モードは0.2-0.3,VRIモードは0.3-0.4を基本とした.2)これらの疾患に対し,造影検査終了時,まずVRIモードで肝全体を観察した後,通常のカラードプラモード(便宜上,以下,残り火走査)に切り替え,両者の血流描出能を比較した.なお,VRIモードのMI値は前述の設定,カラードプラモードのそれは1.5-16である.この比較を最後にしたのは,この高MI値での観察で造影剤が破壊されるためである.ちなみに残り火走査の場合は,カラーノイズが消失するまでカラーゲインを下げて観察している.疾患の内訳は,a)肝腫瘍25例25病変(全て3cm以上)(HCC:8例,肝転移:6例,肝血管腫11例),b)血流異常8例(肝内P-V shunt:2例,門脈血栓:3例,門脈逆流:3例)である.
結果:a)肝腫瘍に関しては,全例で腫瘍内部に高速または低速血流が認められる程度で,殆ど診断に寄与しなかった.また,腫瘍に直接流入する微細血流や腫瘍から流出する微細血流は全く表現出来なかった.b)血管腫の辺縁部には,8/11(74%)で無数の多方向の低速血流がプールしている状態が明瞭に認められた.この所見は他の腫瘍では認められないものであった.c)HCCで5/8(63%),転移で4/6(67%)に,腫瘍境界部に高速流が散在して認められた.d)血流異常に関しては,全例で,どの時相でも,VRIで正しく評価可能であった.特に,実質相ではVRIによる観察が有用であった.e)造影後の比較では,8例全例で,残り火走査がVRIを上回る血流表示能を示した.
まとめと考察:実際の造影超音波検査では,実質相で濃染された実質の中に(血管内の)血流が埋没し,両者の識別に苦慮する.今回の検討で示されたように,現時点では,感度に問題があるものの,VRIは造影検査中に,濃染された実質と血管構造を識別し得るツールとして役立つことが示され,今後の感度の向上で,造影超音波の一角になれる可能性がある.腫瘍診断に関しては,現在の造影超音波像は腫瘍の血管構築を詳細に表現しており,VRIがこれに多くを追加出来るとは思われない.ただ,血管腫の辺縁部に流速の遅い多方向の血流が明瞭に表現され,一見類似した所見ながら,早い流れから構成されている悪性腫瘍との鑑別を更に確実なものにしてくれる.今後の感度の向上で,更に腫瘍の質的診断に対する貢献度が増すと期待される.