Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:肝造影2

(S364)

外傷性肝損傷に対する造影超音波検査の有用性についての検討

The Usefulness of contrast enhanced sonography in patient traumatic liver injury

小松田 智也, 石田 秀明, 大野 秀雄, 古川 佳代子, 鈴木 さとみ, 中岡 宙子, 石井 透, 八木澤 仁

Tomoya KOMATSUDA, Hideaki ISHIDA, Hideo OHNO, Kayoko FURUKAWA, Satomi SUZUKI, Hiroko NAKAOKA, Tooru ISHII, Hitoshi YAGISAWA

秋田赤十字病院消化器科

Department of gastroenterology, Akita Red-cross Hospital

キーワード :

<はじめに>外傷性肝損傷は外傷による内臓損傷の中でも比較的頻度の高い疾患である.その初期診断においては超音波検査が頻用されるが,通常のBモード所見のみでは診断が困難な場合も少なくない.今回我々は採血検査,腹部CT検査で肝損傷が疑われた症例について造影超音波検査を行い,その有用性について検討したので報告する.
<対象>交通外傷によって当院へ緊急搬送され,採血検査,腹部CT検査で外傷性肝損傷が強く示唆された6例(男性1例,女性5例,1−42歳(平均14.5歳))
<使用機器と使用造影剤>使用機器は東芝社製Aplio XV, XG,使用プローブはコンベックスプローブ375BT(3-5MHz可変)使用造影剤はレボビストを2例,ソナゾイドを4例で使用している.観察モードはレボビストではAdvanced Dynamc Flowモード,ソナゾイドをではLow MIモードの連続送信下で観察を行った.
<結果>6例中6例で肝損傷部が確認された.6例中5例では造影CT検査が施行され,肝損傷部の形態は造影CT検査と造影超音波検査で一致していた.6例中1例では単純CT検査のみ施行されていたが造影超音波検査では肝損傷部が確認可能であった.以下に代表例を示す.
<症例1>18歳女性:腹部に明らかな外傷なく,自覚症状もみられないため単純CT検査のみ施行される.単純CT検査で肝周囲に腹水貯留,採血検査で肝機能障害がみられたため肝損傷疑いで超音波検査依頼となる.Bモード所見では肝周囲に腹水貯留を認めた.また肝左葉に若干のエコーレベルのムラがみられたが肝損傷の部位は同定困難であった.ソナゾイドによる造影超音波検査を行ったところ,肝左葉の肝鎌状間膜付着部付近に3x2cm大の不染域がみられ,日本外傷学会肝損傷分類でII型肝損傷の診断となる.臨床症状が軽微であったため外来で経過観察された.経時的に造影超音波検査を行って経過観察したところ,2ヶ月後の経過観察で同部位は瘢痕化した.
<症例2>1歳女性:着衣にタイヤ痕が明瞭に確認された.受診時暴れるために身体所見の確認も困難であった.CT検査も施行不可能であったため超音波検査依頼となる.Bモード所見では肝左葉に3x3cm大のエコーレベルのムラがみられ,外傷性肝損傷が強く示唆された.引き続きソナゾイドによる造影超音波検査を行ったところ同部位が不染域であり,Ib型肝損傷の診断となった.腹腔内出血はみられなかったため,その後鎮静剤の内服を行いCT検査が施行され,超音波検査結果と同様の所見であった.CTで確定診断がつくまで約2時間を要した.
<考察>腹部打撲などの場合,救急外来では初期診断に腹部超音波検査が施行されることが多いが,結果の解釈において熟練を要し確定診断まで至らない場合も多い.確定診断には造影CT検査が必要となるが準備に時間がかかること,ヨード過敏がみられる場合には検査が施行不能であるなどの問題点がある.特に小児においてはCT検査を行うまでに前処置が必要であり診断確定までに時間を有することがあるが,造影超音波検査は血管確保のみ行うことで検査が可能であり,診断確定までの時間が短縮可能であった.軽症例での不要の被曝を避けることも可能であるため,造影超音波検査は外傷性肝損傷の診断に有用であるものと考えられた.