阿部 真久¹, 小川 眞広¹, 後藤 伊織¹, 石綿 宏敏¹, 小野 良樹¹, 森山 光彦¹, 高山 忠利², 杉谷 雅彦³, 石田 秀明⁴

Masahisa ABE¹, Masahiro OGAWA¹, Iori GOTOU¹, Hirotoshi ISHIWATA¹, Yoshiki ONO¹, Mitsuhiko MORIYAMA¹, Tadatoshi TAKAYAMA², Masahiko SUGITANI³, Hideaki ISHIDA⁴

¹駿河台日本大学病院内科, ²日本大学医学部付属病院消化器外科, ³日本大学医学部付属病院病理科, ⁴秋田日本赤十字病院消化器科

¹Internal medicine, Surugadai Nihon University Hospital, ²Surgery, Nihon University Hospital, ³Pathology, Nihon University Hospital, ⁴Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
肝細胞癌の代表的な超音波診断の所見は，halo，mosaic pattern，posterior echo enhancement，lateral wall echoである．一方転移性肝癌の特徴は，bulls eye patternが特徴の一つとして挙げられるが様々な形態を呈することが多く比較的大きな腫瘍においては内部エコーも複雑でいわゆるmosaic様に見えてしまうことも多い．そこで今回我々は両者のB-mode検査での鑑別を明確にする目的でlateral wall echoに着目をしてその検出率の検討を行なったので報告する．
【方法・対象】
対象は，駿河台日本大学病院において超音波検査が施行された20mm以上の大きさの腫瘍で臨床的に診断された肝細胞癌38症例と転移性肝癌23症例とした．内訳は肝細胞癌がC型肝炎18結節，B型肝炎によるもの6結節，非B非C型肝細胞癌15結節，B型C型重複感染によるもの2結節であり，転移性肝癌は，原発巣が大腸癌7結節，胃癌2結節，膵癌3結節である．超音波画像の保存画像より画像再出力を行い，辺縁lateral wall echoの描出について検討した．使用装置はGE横河メディカルシステム社製LOGIQ7・S6，使用探触子は4C・9L である．
【結果および考察】
lateral wall echoの検出率は肝細胞癌で41．5％，転移性肝癌では1例も認めなかった．以上よりlateral wall echoは両者の鑑別に有用な所見であると考えられた．今回，肝細胞癌のlateral wall echoの検出率が低かったが比較的大きな症例が多いためと考えられ，肝細胞癌でも浸潤症例や単純結節型以外では検出されない所見であることが確認された．今回lateral wall echoを有した症例は典型的なhaloを呈しており，肝細胞癌でみられる薄い辺縁低エコー帯と転移性肝癌でみられる厚い辺縁低エコー帯は非常に客観性が低くlateral wall echoは両者の鑑別についても有用な所見となる可能性があると考えられた．