Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:その他1

(S353)

Duchenne型筋ジストロフィーにおける下肢挙上による反応と有用性について

In posterior radial myocardial strain by leg lifting detected early myocardial dysfunction in patients with Duchenne’s muscular dystrophy

山本 哲志1, 川合 宏哉2, 大西 哲存2, 林 伸英1, 木下 承晧1, 河野 誠司1, 平田 健一2, 松尾 雅文3, 熊谷 俊一1

Tetsushi YAMAMOTO1, Hiroya KAWAI2, Tetsuari ONISHI2, Nobuhide HAYASHI1, Shouhiro KINOSHITA1, Seiji KAWANO1, Ken-ichi HIRATA2, Masafumi MATSUO3, Kenichi KUMAGAI1

1神戸大学医学部附属病院検査部, 2神戸大学大学院医学研究科循環病態学, 3神戸大学大学院医学研究科小児科学

1Department of Clinical Laboratory, KOBE university hospital, 2Division of Cardiovascular Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine, 3Department of Pediatrics, Kobe University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は,拡張型心筋症様の不可逆的心筋病変を生じるため,早期の心筋病変を検出することは重要である.今回の研究目的は,安静時に正常心機能を示すDMD症例において,下肢挙上負荷心エコー図を行い,前負荷増大に対する心機能の反応性を評価し,本症における早期心筋病変の診断能に関して検討することである.
【対象・方法】
当院小児科を受診しDNA解析にてDMDと確定診断し得た男児64例(11.0±3.7歳)を対象とし,傍胸骨ならびに心尖部心エコー図断層像を用いた評価により,局所壁運動異常を認めない47例(DMD正常群)と局所壁運動異常を有する17例(DMD異常群)に分け,年齢を適合させた健常ボランティア(健常群)20例(10.5±1.8歳)を対照群として比較検討を行った.全例に両下肢を約45度に持ち上げる下肢挙上負荷を行い,その前後で心エコー図検査を行った.超音波装置は東芝社製Aplioを用いた.測定項目は,傍胸骨アプローチ左室長軸・短軸断層像あるいは左室Mモード図より拡張末期,収縮末期左室内径を計測し,左室内径短縮率を算出した.また,組織ドプラ法を用いて乳頭筋レベル左室短軸像を記録し,オフライン解析にて関心領域を左室後壁に設定し,短軸(radial)方向の最大ストレイン(Ssys)を計測した.
【結果】
安静時におけるDMD異常群の拡張末期左室内径はDMD正常群ならびに健常群に比し有意に高値であり,左室内径短縮率は有意に低値であったが,DMD正常群と健常群との拡張末期左室内径および左室内径短縮率は有意な差がみられなかった.下肢挙上負荷により,拡張末期左室内径は3群ともに有意な増加を認めた(健常群;42.3±3.1 o vs 44.2±2.8 o p<0.0001,DMD正常群;39.7±3.3 o vs 40.4±3.2 o p<0.01,DMD異常群;48.3±9.9 o vs 49.8±9.7 o p<0.005).一方,左室内径短縮率は下肢挙上負荷により,健常群で有意な増加を認めた(35.3±0.04% vs 39.7±0.04% p<0.005)が,DMD正常群ならびにDMD異常群では有意な変化がみられなかった(DMD正常群;37.5±0.06% vs 39.1±0.06% N.S.,DMD異常群;17.2±0.08% vs 18.7±0.08% N.S.).ストレイン指標に関しては,安静時におけるDMD異常群のSsysはDMD正常群ならびに健常群に比し有意に低値であった.さらに,下肢挙上負荷により,健常群で有意な増加を認めた(1.24±0.29 vs 1.46±0.41 p<0.0079)が,DMD正常群ならびにDMD異常群では有意な変化がみられなかった(DMD正常群;1.24±0.47 vs 1.27±0.44 N.S.,DMD異常群;0.28±0.27 vs 0.25±0.25 N.S.).安静時に正常心機能を示すDMD症例および健常例において短軸方向のストレイン≧1.23のカットオフ値は,健常例を感度55%特異度65%で予測し,安静時と下肢挙上時のAUC解析ではp=0.007
【結論】
下肢挙上負荷心エコー図法は,安静時指標では判別し得なかった健常例とDMD正常群の収縮予備能の差を客観的に評価し得,DMD症例における早期心筋病変の診断に有用である可能性が示唆された.