Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:血管(動脈機能)

(S351)

高コレステロール血症患者におけるフルバスタチンの頸動脈弾性特性に対する作用

Effects of Fluvastatin on carotid arterial elastic modulus in patients of hypercholesteremia

山岸 俊夫1, 加藤 真2, 長谷川 英之3, 4, 金井 浩3, 4

Toshio YAMAGISHI1, Makoto KATO2, Hideyuki HASEGAWA3, 4, Hiroshi KANAI3, 4

1東北公済病院内科, 2パナソニック四国エレクトロニクス㈱開発部門, 3東北大学大学院医工学研究科医工学専攻, 4東北大学大学院工学研究科電子工学専攻

1Internal Medicine, Tohoku Kosai Hospital, 2Development branch, Panasonic Shikoku Electronics Co. Ltd., 3Biomedical Engineering, Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 4Electronic Engineering, Graduate School of Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
スタチンは,高コレステロール血症の患者を対象にした大規模研究において頸動脈内膜中膜肥厚(IMT)の進展抑制や退縮作用があることが知られている.今回,スタチンのIMTおよび頸動脈壁弾性特性に対する作用ついて検討した.
【方法】
外来患者61人(平均年齢60±7才,男20,女41人)について,生化学データ,hsCRP,NO,脈波伝播速度(baPWV)を測定した.また頸動脈エコーにて内膜中膜肥厚(IMT)および位相差トラッキング法 (Kanai et al. 2003 Circulation)による弾性特性計測を行った.計測部位は,左右の総頸動脈の各2箇所,Bulbを含まない平坦部分について,合計4箇所とした.IMTとIMT計測領域における血管弾性特性の平均(円周方向のEθ)を計測し,各部位でmeanIMTとmean Eθを求めた.フルバスタチン30mgを1日1回内服してもらい,各種パラメーターを12ヶ月間観察した.
【成績】
LDLコレステロール(LDL-C),hsCRP,baPWVの初期値は,155±24 mg/dL,541±414 mg/L,1592±310 cm/secであり,フルバスタチンの投与後LDL-C は,1ヶ月後から有意に減少(−30%)し,hsCRPとbaPWV は12ヶ月後には,それぞれ-57%,−10%と有意に減少していた.またNOは,投与前の50%の増加を示した.頸動脈壁は,240部位を観察し,全体の解析では,meanIMTおよびmeanEθの初期値は0.88±0.25 mmおよび158.5±62.0 kPaであり,meanIMTおよびmeanEθはともに有意に減少した.投与前に比べて,meanEθは,3ヶ月後から有意に減少したが,meanIMTは,12ヶ月後に有意に減少した.次に,各計測部位の最大厚maxIMTを用い,maxIMT1.1mm未満(非肥厚群)と,maxIMT1.1mm以上(肥厚群)の2群に分けて解析した.肥厚群では,meanIMTおよびmeanEθはともに有意に減少した.一方,非肥厚群では,meanEθのみが有意に減少し,meanIMTは減少傾向であった.次に投与前のmeanEθで,meanEθ≦100(低値群),100<meanEθ<200(中間群),200≦meanEθ(高値群)に分けて解析した.この場合,meanIMTの変化は有意に検出されなかった.しかし,低値群では,1ヶ月後より,meanEθの有意な上昇が認められた.また高値群では,1ヶ月後より,meanEθの有意な減少が認められた.中間群では,meanEθの有意な減少が6ヶ月後より認められた.これらの成分の増分,減分をヒストグラムで解析したところ,薄い部分では,平滑筋の硬さに相当する成分が増えていたことから,内皮機能の改善が考えられた.また厚い部分では,脂質の硬さに相当する部分が減り,線維性被膜に相当する部分が増えていた.以上のような成分の複雑な変化により,meanEθの変化が生じるものと推察した.
【結論】
以上から体表からの超音波による血管弾性率計測は,脂質や平滑筋成分の減少および線維性被膜の形成といったスタチンの抗動脈硬化作用を観察し得る可能性が示唆された.また頸動脈弾性特性は,スタチンの作用をIMTやbaPWVの変化する前の早期に検出できる可能性が示唆された.