田中 宣暁, 上松 正朗, 大西 俊成, 南都 伸介, 渡部 徹也, 永田 正毅

Nobuaki TANAKA, Masaaki UEMATSU, Toshinari ONISHI, Shinsuke NANTO, Tetsuya WATANABE, Seiki NAGATA

関西労災病院循環器科

Cardiovascular Division, Kansai Rosai Hospital

キーワード :

【背景・目的】
我々は，カラー組織ドプラ法を用いてpost-systolic shortening （PSS）を断層心エコー図上に表示する方法（Detection of Diastolic Abnormality by Displacement Imaging: DADI）を考案し，安定狭心症において安静時にもPSSが検出されることを報告したが，本法が救急外来における胸痛患者のリスク評価に有用か否かは明らかではない．本研究では救急外来における胸痛患者にDADIを用いて急性冠症候群（ACS）を診断し得るかを検討した．
【方法】
対象は胸痛を主訴に救急外来を受診した連続56症例．超音波診断装置は東芝社製Aplioを用いた．心エコー図にて左室壁運動正常と判定された症例にDADIを追加した．DADIは組織ドプラ法によるDisplacementのピーク時相のずれにより正常 （緑色） から遅延（赤色）までを表示するように設定し，冠動脈支配領域に一致して心筋のセグメントが赤色表示されるものを陽性とした．ACSは，緊急冠動脈造影を施行し，AHA分類にて90％以上の高度狭窄を認めたものとした．
【結果】
41症例（73％）がACSであった．心エコー図による壁運動異常の存在のみではACSの診断は感度75％，特異度100％であったのに比し，DADIを追加することにより感度97％，特異度66％，正確度89％，陰性予測値91％でACSを診断し得た．
【結論】
DADIは救急外来における胸痛患者のリスク評価に有用である．