椎野 憲二¹, 松浦 秀哲², 高橋 礼子², 大平 佳美², 高田 佳代子¹, 坂口 英林¹, 山田 晶¹, 岩瀬 正嗣¹, 尾崎 行男¹

Kenji SHIINO¹, Hideaki MASTUURA², Ayako TAKAHASHI², Yoshimi OHIRA², Kayoko TAKADA¹, Eirin SAKAGUCHI¹, Akira YAMADA¹, Masatsugu Iwase¹, Yukio OZAKI¹

¹藤田保健衛生大学病院循環器内科, ²藤田保健衛生大学病院臨床検査部

¹Department of Cardiology, Fujita Health University School of Medicine, ²Clinical Laboratory, Fujita Health University Hospital

キーワード :

【背景・目的】
左房容積係数（LAVI）を僧帽弁輪拡張後期後退速度（A’）で除したLAVI/A’は左室機能障害に伴う左室充満圧および肺動脈圧の上昇と相関することが報告されている．本研究の目的は冠動脈疾患患者の死亡または心不全入院の予測因子としてLAVI/A’の有用性の検討である．
【対象と方法】
2006年1月から2008年5月までに当院に冠動脈疾患のために入院した患者を対象とした．
入院時に組織ドプラを含む心臓超音波検査を施行した．心房細動または重度の僧帽弁疾患患者は除外した．対象は214名（平均年齢64±12歳，男性167名）であった．このうち64名は右心カテーテル検査が施行された．A’は心尖部四腔断面像においてサンプルボリュームを中隔側僧帽弁輪部におき計測した．左房容積は収縮末期の心尖部四腔像及び二腔像でbiplane Simpson法により測定し，それを体表面積で除してLAVIとした．右心カテーテル検査を施行した46名に2009年 3月 18日 水曜日ついては心臓超音波検査と同時に肺動脈楔入圧（PAWP）を測定した．
入院時に採血検査でBNPの測定も行った．
平均17ヵ月（0〜35ヵ月）追跡調査を行い，死亡と心不全による再入院を調査した．
【結果】
追跡調査期間中に8名が死亡し9名が心不全による再入院となった．ROC曲線からLAVI/A’のイベント予測のカットオフ値は3.0と決定し，患者を以下のうように2群に分類した．
グループA：LAVI/A’≧3.0（n＝50名）
グループB：LAVI/A’＜3.0（n＝164名）
カプランマイヤー曲線ではイベント発生率はグループAにおいて有意に高かった（log-rank,p＝0.0023;図）．LAVI/A’はPAWP（r＝0.31,p＝0.03）およびlogBNP（r＝0.47,p＜0.0001）と有意な正の相関関係を示した．多変量解析の結果，LAVI/A’は死亡および心不全入院の独立した予測因子であった．
【結語】
LAVI/A’は冠動脈疾患患者における死亡および心不全入院の予測に有用な指標であり，LAVI/A’が高値であることはPAWPおよびBNPの上昇を意味することが示唆された．